大手スーパーで減益、赤字が相次ぐ異常事態の深層 メーカーと消費者の「板挟み」で苦しい経営に

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メーカーの値上げをすべて店頭価格に反映できればよいが、スーパー側はそうできない事情がある。インフレが続くこの数年、業界関係者の多くが消費の二極化を指摘してきた。消費者が日常的な支出を節約する一方、祝日や行事などの出費を増やす傾向が強まっているということだ。

業界大手の中堅社員は「今年も二極化傾向は継続している」としつつ、「高付加価値な総菜がよく売れた昨年と同様の仕入れを行ったが、高めの商品は想定ほど売れず、廃棄ロスや見切り品が増え、粗利率を稼げなかった」と語る。節約志向はこれまで以上に強まっているのだ。

仕入れ値の上昇はスーパーの経営をダイレクトに圧迫する要因だ。平均的な営業利益率が2~3%といわれる食品スーパーにとって、コンマ数ポイントの粗利率の調整が損益のカギを握る。

イオンの吉田昭夫社長が「原価が上昇する中で価格競争になっており、粗利益率を維持することが難しい」と語るように、大手各社も利益確保に苦戦している。

業界首位のライフコーポレーションは節約志向に対応するため、今年度の粗利率を戦略的に前期の31.4%から0.1%引き下げる方針を示していた。が、上期の粗利率は前年同期比0.4%のマイナスとなった。中でも売上高の1割超を占める畜産部門の粗利率は同2.2%のマイナスと大幅減だった。

スーパーが割を食っている

そんな中、人件費の上昇も追い打ちをかける。最低賃金は今年の改定で全国平均1055円と約5%上昇。最大手のイオンは昨年に続き、今年もパート労働者の時給を7%引き上げた。各社は募集をかけるにあたって「イオンの賃上げを意識せざるを得ない」(業界幹部)という。

消費マインドの悪化と仕入れ値高騰の板挟み状態に、人件費の増加でさらに利益が圧迫される。大手の経営企画担当者は「政府からは『取引先からの値上げ要請をのめ』、消費者からも『価格転嫁するな』と言われている状況で、スーパーが割を食っている」とこぼす。

一方、増益基調を保つチェーンもいる。代表例が岡山地盤のハローズ、イオン傘下のマックスバリュ東海だ。それぞれ前年同期比14%、8.6%の営業増益を達成した。

埼玉地盤のベルクも、上半期の半年間では2%減益となったものの、第2四半期(6~8月)の3カ月間では前年同期比5%の増益を達成。足元でも既存店の絶好調が続いている。

明暗を分けたポイントが売上高に対する人件費の比率だ。人件費率の高いチェーンはその分、粗利益を多く確保しなければ利益を出せない。相対的に割高になってしまうため、既存店売上高は低迷しがちだ。

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