「洋画は見ない…」日本の"洋画離れ"に起きた異変 不振だったディズニーは様々な施策が成果出す
しかし、それだけでは大ヒットが生まれなくなったのがアフターコロナだ。「50億円到達のためには、現状のディズニーファンを超える新しい層に届かないと難しい」と市場を分析し、地方のファミリー層など子どもたちの開拓と掘り起こしに改めて取り組んでいた。
具体的には、同層への体験型のプロモーションを軸に置き、全国各地のショッピングモールで映画キャラクターのバルーンアート(11カ所)を子どもたちが作るワークショップを実施したり、迷路(5都市)やスタンプラリーといったアトラクション的なタッチポイントを増やした。
そのほかにもディズニーストアのグッズや、イクスピアリ(東京ディズニーリゾート)と連携した日本最速試写や施設内宣伝などにより、観客との関係性を深めることに徹底的に注力した。
こうした地道な取り組みは、映画宣伝の王道であり基本的なことではあるが、SNSやネットなどで情報があふれる時代に、リアルな体験こそ人の心を動かす大きな力があることを如実に示しているのではないだろうか。
とくに映画のようなエンターテインメントにおいて、特別な体験は作品への感情移入につながり、次の行動への大きなモチベーションになる。もちろんSNSなどによるマーケティング戦略は重要だ。それと体験型の施策を両輪とするのは、宣伝の原点回帰でもあるだろう。それが実際に成果につながった。
洋画が体験消費として再認された
こうしたディズニーの取り組みは、昨年の『リトル・マーメイド』(34億円)や『マイ・エレメント』(27億円)から積極的に行われていた。なかでも、特徴的な事例は『リトル・マーメイド』。地方の高校の吹奏楽部の演奏付き試写会などで、地元とのエンゲージメントを強めていた。
佐藤氏は「ディズニー作品は昨年から復調しはじめていました。作品ごとの興収はどんどん積み上がってきて、今年もその波が続いています」と言葉に力を込める。
洋画の雄が、時代の過渡期を乗り越えて、昨年から再び映画館に観客の足を向けさせている。今年はようやく興収というひとつの象徴的な形になって見えてきた。
それを現場の興行主も実感している。シネコンのイオンシネマを運営するイオンエンターテイメント映像本部コンテンツ編成部・部長の玉置修氏は、『インサイド・ヘッド2』の興行を「今夏のファミリー層のファーストチョイス映画であり、女児中心の予想から、男児にも同等にご来場いただきました。さらに夏休み終了後は、シニアを含む大人だけのご鑑賞も増えました。作品が高く評価されたとも感じています」とその好調ぶりを振り返る。
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