意外と驚かれた「ベネトン」が日本撤退に至るまで 80年代に一世を風靡したブランドの栄枯盛衰

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筆者はこの10年、ピッティ・イマージネ・ウオモとミラノ・ファッションウィークの取材で頻繁にイタリアを訪れているが、ベネトンの店舗を現地で見たのは数えるほどしかない。調べてみると、現時点でフィレンツェには3店舗あるものの、ファッションの中心地であるミラノには2店舗しかなかった。

現在のベネトンの商品の価格帯は、ファストでもハイファッションでもない中価格帯で、直営のECではメンズのピュアカシミアのセーターが268ドル、ウィメンズのワイドパンツが108ドル、ウィメンズのベルベットのトレンチコートが268ドルとなっている。

いわゆる日本の百貨店アパレルに相当する価格帯で、安いか高いかの二択になりつつある現在のアパレル業界ではもっとも厳しいゾーンとなる。デザイン的にもかつてのポップさは影をひそめ、どこにでもある無難なデザインのものが多い印象を受ける。

ホームページには現時点で世界3600店舗を持つと書いてあるが、これがすべて直営なわけがないので、伝統的なフランチャイズ形式、代理店経由の小売店での販売を継続しているのは明らかだ。

しかしECは自社運営だと思われるので、SPA形式とフランチャイズ形式、代理店経由の小売店での販売を中途半端に併用していると考えられる。このビジネスモデル自体に抜本的な改革が必要なのは言うまでもない。

デザイン面での改革が必須

そして何よりも必要なのはデザイン面の改革である。個人的にこの10年ほど80〜90年代のイタリアの古着を掘っていることもあり、ベネトンの全盛期の服に触れることがある。着るだけで元気が出るようなカラフルで斬新なデザインはもちろん、縫製のクオリティも素晴らしいものがあり、現代でも十分通用すると感じる。

こうしたブランドの豊富な遺産=アーカイブを現代的に再編集できるクリエイティブディレクターを起用し、イタリア発のアフォーダブル・ラグジュアリー(手に届く価格の贅沢)なポジションを目指せば、復活が見えてくるのではないだろうか?

増田 海治郎 ファッションジャーナリスト

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ますだ かいじろう / Kaijiro Masuda

1972年埼玉県出身。神奈川大学卒業後、出版社、繊維業界紙などを経て、2013年にフリーランスのファッションジャーナリストとして独立。『GQ JAPAN』『MEN'S Precious』『LAST』『SWAG HOMMES』「毎日新聞」「FASHIONSNAP.COM」などに定期的に寄稿。年2回の海外メンズコレクション、東京コレクションの取材を欠かさず行っており、年間のファッションショーの取材本数は約250本。メンズとウィメンズの両方に精通しており、モード、クラシコ・イタリア、ストリート、アメカジ、古着までをカバーする守備範囲の広さは業界でも随一。仕事でもプライベートでも洋服に囲まれた毎日を送っている。著書に『『渋カジが、わたしを作った。』

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