冷戦期の遺物「核共有」にこだわる石破首相の思考 アメリカは拒否、核不拡散条約違反との批判も

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石破氏は、首相就任後、アジア版NATOや核共有の議論を棚上げにしている。だが、自民党界隈の核共有論は根が深いことに注意する必要がある。

例えば、2012年から2019年まで安倍内閣の官房副長官補(2014年からは国家安全保障局次長兼務)を務めた兼原信克氏や、2014年から2019年まで自衛官の最高位である統合幕僚長を務めた河野克俊氏も核共有推進論者だ。

河野氏は、公益財団法人国家基本問題研究所のコラム(2022年4月4日付)で、今こそ「核共有」の議論を、と提言している。兼原氏は、2022年7月発行の河野氏との対談本『国難に立ち向かう新国防論』で、「海上自衛隊に核戦略潜水艦隊をつくり、海上自衛隊の潜水艦に米軍クルーとアメリカの核兵器を搭載する」核共有を提唱している。前述の多角的核戦力(MLF)の亡霊のような構想だ。

内閣官房参与は「核共有」と核武装を提唱

また、石破茂内閣の内閣官房参与(外交・安全保障担当)に任命された川上高司元拓殖大学教授は、2023年夏に『海外事情2023年7・8月号』(拓殖大学海外事情研究所刊)で、「日本の核シェア――米国の拡大抑止をいかに確保するか――」という論考を発表している。

さらに、川上氏が理事長を務める「日本外交政策学会」は、今年6月20日、理事長名で「戦後最悪の状況、露朝同盟の締結 ――日本には核武装しか選択肢はない!――」と題された小文を掲載している。核共有では「核のボタンを押す権利がない」から、「米国が核を日本に許与して日米安保の枠組みで核武装をする」「イギリス型の核武装」を追求すべきだという。

前半の「核のボタンを押す権利はない」との認識は正しいが、後半の「核武装を追求すべき」という主張は穏やかではない。このような主張をする人物が首相のブレーンであると言われていて、内閣官房参与となっているのは気がかりだ。

10月27日投開票の衆議院選挙の後、自民党内で、アジア版NATO、核共有、日米地位協定改定などについて議論が始められるという。

自民党総裁選後に政務調査会会長に就任した小野寺五典氏は、上述の2022年3月の核共有問題勉強会を安全保障調査会が開いた際の同調査会会長だった。

核共有の是非については、内外の専門家や関係者から情報を集めて共有し、まっとうな結論を出すよう望みたい。

田窪 雅文 ウェブサイト「核情報」主宰者

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たくぼ まさふみ / Masafumi Takubo

ウエブサイト「核情報」(http://kakujoho.net/)主宰。原水爆禁止日本国民会議(原水禁)国際担当、法政大学(平和学)講師、プリンストン大学「科学・安全保障プログラム」コンサルタントなどを経て現職。「核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)」メンバー。主要著書に『プルトニウム:原子力の夢の燃料が悪夢に』(フランク・フォン・ヒッペル、カン・ジョンミンと共著、緑風出版、2021年)。

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