「リスキリングは必要?」と思う人の残念な"誤解" 「最近忙しいので……」と断るのはもったいない

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ここ数年、事業の構造改革のために希望退職者を募るケースが見られるようになった。業績が悪化しなくても、人材の入れ替えを積極的に実施する企業は今後も増えていくだろう。

企業は生き残りをかけて、事業の新陳代謝を進めていかなければならない時代になった。そのためにも新事業に貢献できる人材を外から求め、そうでない人材と入れ替えるのは当然だ。

リスキリングを義務づけられ、「私はリストラ対象か?」と疑心暗鬼になるのもやめよう。リストラに関わる「学び直し」はアウトスキリングであり、特にデジタルスキルなどが足りないベテラン社員に、転職に役立つスキルアップの機会を与えるものだ。一般的なリスキリングとは、意味合いが異なる。

リスキリングという言葉が普及する前は、リカレント教育という言葉がよく使われた。リカレント教育は仕事とは関係のない生涯学習を指し、他の3つと明確に異なる。私の知人も50歳を過ぎてから経営を勉強し直したいと言い、会社を辞めて大学に入りなおした。これが典型的なリカレント教育である。

ほとんどの社会人が「勉強不足」の日本

総務省統計局が2016年に実施した「社会生活基本調査」によると、社会人の勉強時間は平均1日6分だった。その6年後、2022年に実施した同調査でも、平均は1日13分だった。約6年の間で、たったの「7分」しか増えていない計算だ。

リスキリングという言葉が浸透しはじめたのは2020年の頃からである。世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において「リスキリング革命」という言葉が使われ、技術革新やビジネスの変化に対応するために新しい知識やスキルを得ることの必要性が明らかになったことがきっかけだ。

それでも日本人の勉強不足はいっこうに改善されず、世界と比べて危機感を持った日本政府が個人のリスキリング支援に5年で1兆円を投じると2022年に表明したほどだ。

欧米のみならず、アジア諸国を含めた調査を見ても、日本人は突出して「勉強不足」だ。

「リスキリングを義務づけられると、業務にシワ寄せがくる」という声もあるが、絶対的な勉強時間そのものが少ないのであれば、その姿勢は改めたほうがいいだろう。

いまの仕事や業務がいつまで存在するか、わからない時代だ。自分の時間のほぼすべてを目先の業務に充てるのではなく、将来のための“投資”にも配分しよう。

リスキリングとは個人への投資である。会社としては、間接的なメリットはあっても直接的なメリットはない。福利厚生のようなもので、従業員エンゲージメントをアップさせるための取り組みといっていい。優秀な人材を採用すること、離職リスクを下げることが目的だ。

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