「リスキリングは必要?」と思う人の残念な"誤解" 「最近忙しいので……」と断るのはもったいない
ほかの会社でも、同じような理由で不安を覚える人がいた。56歳の課長経験者だ。55歳の筆者と同世代である。
「ついにリスキリングを強制された。いよいよこの会社にいられなくなるのだと確信しました。2年前に10歳年下の部下に課長職を奪われてから覚悟はしていましたが……」
会社からリスキリングを義務づけられてから、仕事に対するモチベーションが著しく下がっていると言う。
4種類の「学び直し」について覚えよう!
このように現場でコンサルティングをしていると、「学び直し」について誤解している人がとても多いと感じる。
確かにリスキリングの目的の一つに、異なる産業間の労働移動を促すことがある。しかし、もっと長期的視点で考えるべきだ。当然だが「リストラ前の準備」として学び直しをさせることをリスキリングとは言わない。
厚生労働省の「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を確認してほしい。このサイトには、企業と労働者双方が意識すべきリスキリングについて明確に示されている。
リスキリングに関する誤解が、さらに誤解を生むことになりそうなので、ここで言葉の定義を整理してみよう。最低限、次の4つの言葉は理解しておきたい。
一般的な社員教育はリスキリングではなく、アップスキリングと呼ぶ。実務スキルのみならず、マネジメント教育、マーケティングや生産性アップの研修など、すべてアップスキリングの範疇だ。
その点、リスキリングは「新しい職業に就く」ための教育だ。「マスト(Must)」ではなく、どちらかというと「ナイストゥハブ(Nice to have)」。「あればよい」けれど「必須」ではないと受け止められがちだ。
そのため「ロジカルシンキングの研修を受けてみないか?」「デジタルスキルをゼロから学べる講座があるが、どうだ?」と会社から勧められても、「時間があればぜひ受けたいのですが、最近忙しいので……」などと言って断る人が多い。
私自身がこういった研修の講師をしているので、この点は肌で感じている。しかし、この姿勢は極めてもったいない。
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