もっともこうした彼らの姿勢は、危機が深まる東アジアの現状に対するものだ。すでに時間との戦いとなっている拉致問題について、小泉氏は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と「同世代のトップ同士で、胸襟を開く」と意欲を示すが、認識の甘さに批判の声もある。
なお小泉氏は9月14日に日本記者クラブが開催の公開討論会で上川氏に「首相になったら、カナダで開かれる来年のG7サミットで何を発信するのか」と尋ねられた時も、「トルドー首相と43歳で首相になった者同士が胸襟を開き、新たな未来志向の外交を切り開く」と回答した。
経済政策ではそれぞれの特徴が顕著に
経済については、それぞれの特徴が出ている。石破氏は地方創生を「日本経済の起爆剤」と位置づけ、富裕層の優遇是正のための金融所得課税の強化にも言及。加藤氏は「所得倍増」を掲げ、企業の設備投資の活性化を行い、最低賃金を2000円の水準に上げることを目指す。
加藤氏は金利の正常化には基本的に賛成で、「足元の経済を見ながら、慎重にやるべき」派だが、2021年の総裁選と同様に「アベノミクス」を引き継ぐ高市氏は、金利引き上げに断固反対。積極的な財政出動をさらに進めることを提唱しつつ、日銀の金利引き上げについても、「企業が投資をしにくくなる。消費マインドを下げてはいけない」と批判している。
こうして見てみると、総裁選に出馬している9人の候補者たちは、①先人の遺産を受け継ぐ者ーー小泉氏と高市氏、②過去と断絶する者―茂木氏と河野氏、③地方を重視する者ーー林氏と石破氏、④若者や女性に対する政策を重視する者ーー上川氏と小林氏、➄所得倍増を提唱ーー加藤氏というように分類することができる。興味深いのは決選に残れるかどうかを争っている高市氏と小泉氏が、ともに①に分類できる点だ。
高市氏は「故・安倍晋三首相の継承者」という立場を確立し、岩盤保守層の支持を固めつつある。その一方で小泉氏は父・純一郎氏が行った小泉改革が足かせになりがちで、それを超える政策を打ち出してはいない。
総裁選に勝利すれば、総理大臣への切符を手にすることができる。現在のところ有力候補は3人だが、5度目の挑戦を最後とする石破氏か、前回の総裁選よりも勢い付いている高市氏か。それとも自民党史上最年少の総裁を目指す小泉氏か――。9月27日に行われる自民党総裁選は最後まで目が離せない。
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