岡山「ベンチャーの村」に出向したJR西社員の仕事 鉄道会社に新しい風を吹かせることができるか

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自ら挑戦したいと手を挙げたのが、武部啓吾氏だ。現在は西粟倉村産業観光課に出向しつつ、村内に本社を置く株式会社エーゼログループの業務にも携わっている。同社は相反することが多い「企業の利益」と「社会貢献」の両立を目指す。正反対の色である白と黒を模様にするゼブラ(シマウマ)に例え、地域の課題解決に取り組みつつ、持続的な繁栄を目指す、いわゆる「ローカルゼブラ」企業である。

出向期間は最長で2027年5月末まで。JR西日本には鉄道分野に特化した社員が多いが、より深く地域に溶け込むことで、これまでの鉄道会社にはいない人材になることが期待されている。

武部氏はJR西日本では建設工事部に所属し、北陸新幹線敦賀延伸開業における敦賀駅建設の中心的人物でもあった。「駅を造ることで、地域に貢献しているやりがいは感じていた」と話す武部氏だが、「社外の人材育成プログラムで行ったカンボジアで、学校に行くことがかなわない女の子に出会い、その子らに将来を見越した基礎的な教育と技術支援を行いました。その際、心からの『ありがとう』という一言が今でも忘れられない」とにわかに目を潤ませる。

「会社での普段の仕事はもしかしたら私がいなくても回るかもしれない。そう考えると、自身の環境に変化を求める気持ちが深くなっていった」とこのプロジェクトに挑戦した。

ベンチャー企業が続々と拠点を設置

西粟倉村は2008年に「百年の森林構想」を着想し、翌2009年に実動化した。

村の周囲に広がる民有林を村が主体としてまとめ、スギ・ヒノキ林を整備する。また、かつて村内で盛んに行われていた木材産業を再び活性化し、エネルギー・森林資源の村内循環を行い、50年後のつながる「上質な田舎づくり」を目指して、村内外問わずに情報を発信する。単なる自然保護という観点ではなく、森林および木材を活用した持続可能な経営を維持することを念頭にプロジェクトを発足させた。並行して山を管理することで土砂災害を防ぐ狙いもある。

2013年には木材加工業や加工品販売を中心にベンチャー企業が村内に拠点を設けたことを皮切りに、続々と多業種のベンチャー企業が村にやってきた。現在では飲食業や子育て支援事業など60社ほどの企業の拠点があるが、いわば「よそ者」がやってくることに地域の反対はなかったのだろうか。当時の様子を上山隆浩副村長はこう振り返る。

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