【産業天気図・建設業】「脱談合」響き粗利悪化。中堅ゼネコンは苦況に
建設業の空模様は今06年度は「曇り」、来07年度は「雨」となりそうだ。
各社の06年9月中間決算では、期初予想を上回るペースで厳しさを増している業界の実態が明らかになった。主要ゼネコン30社中21社の営業損益が前年同期比で悪化し、最大手の大成建設<1801.東証>や、談合事件で名前が取り沙汰された準大手のハザマ<1719.東証>、前田建設工業<1824.東証>など、通期計画の減額修正も相次いだ。
減額修正が相次いだ原因の一つは「脱談合」の影響による公共土木工事での完成工事総利益率の悪化だ。改正独占禁止法施行などに押され、特に大手ゼネコンの「談合決別」姿勢が鮮明になった結果、公共工事入札の落札率が低下しているのだ。土木の競争激化は建築にも波及、これに首都圏建築での人手不足(人件費高騰)などが加わり、収益は各社の予想以上に後退している。
大成や大林組<1802.東証>が通期の単体土木粗利益率予想などを下方修正する一方、全体の業績予想では鹿島<1812.東証>がわずかに増額修正した。開発事業で今期マンション売却が好調に推移しているようだ。
準大手では、長谷工コーポレーション<1808.東証>の好調ぶりが際立っている。マンション施工は堅調に推移、土地売買も伸びた。優先株を80%以上を消却し、再建完了に向けてラストスパートに入っている。
官庁工事への依存が高い中堅に目を向けると、一層の厳しさが見受けられる。一転営業赤字予想となった鉄建<1815.東証>など、上述した土木・建築の競争激化の影響をもろに受けている企業が多い。
続く07年度は、公共事業削減に歯止めが掛からず、また設備投資など民間建築にもやや減速感が出ていることから、楽観はできない。シェアを広げる最大手、生き残り競争激化の準大手以下という図式に変化はないだろう。
ただ、公共工事の落札率低下については、今年10月に自民党が緊急対策会議を設置し、原価割れを起こす業者の排除などを国土交通省に求めている。同省も低価格入札の調査・処分の強化に積極的で、来年は今年のような過激な落札率低下に歯止めが掛かる展望も見えてきた。ただ、こうした救済措置は「談合を再び是認するのか」「過保護ではないか」との批判も集めそうだ。
【鈴木謙太朗記者】
(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部
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