タイ洪水の深刻度、日本企業への影響を独自調査
トヨタ自動車は8日に発表した決算で、タイ洪水による影響が不透明として、通期業績見通しの公表を見送った。トヨタの3工場は被災しなかったが、部品不足により10月10日から稼働を停止した(11月21日から操業を再開)。余波は他地域に及び、日本や北米、ASEANなどの車両工場が減産に追い込まれている。12日までの台数影響は15万台(うち日本で4万台)に及ぶ。
最も影響が大きいのはホンダだろう。自動車メーカーで唯一、自社工場が被害を受けた。ロジャナにある工場は浸水したままで、「排水が終わるのが早くて12月中旬。来年3月まで操業は難しいだろう」(池史彦専務執行役員)。部品不足で北米、日本の車両工場は現在、約5割の減産を余儀なくされている。ホンダも今期予想は非開示としているが、この影響で、30万~35万台を逸失する可能性がある。今期の計画販売台数を約1割減らすインパクトだ。
「浸水した工場にワニがいた」「浸水用具が調達できず作業できない」。被災した部品メーカーからは悲痛な声が上がる。現地の水位は徐々に下がり、排水作業も始まったが、「7日になり、取引先が新たに浸水した」(日産系部品メーカー)といった話もある。「タイ洪水の影響は皆目わからない。12月以降国内生産に影響が出るかもしれない」(スズキの鈴木修会長)。
現在、自動車メーカー各社は部品の代替調達を急ぐ。ポイントはタイ以外への影響をいかに食い止めるかだが、正常化に1~2カ月かかるというのがメインシナリオ。タイで生産される部品は汎用性が高く、早期挽回は可能との見方もある。いずれにせよ、震災からの挽回生産に取り組む日系自動車メーカーへの大きな冷や水となったことは間違いない。
南部の工業団地に浸水域拡大の可能性
乾期に入り大雨の懸念はなくなったが、降り注いだ大量の雨水がゆっくりと海に向かって南下しており、洪水被害は拡大する様相だ。
6日にはバンチャン工業団地の一部で浸水被害を確認。現在もバンコク南部・東部に位置する五つの工業団地について、水が達する可能性があるとして、警戒体制が取られたまま。予断が許されない状況が続く。