野村ホールディングスの格付けBaa2を引き下げ方向で見直し《ムーディーズの業界分析》
一方で、ムーディーズは、野村のバランスシートの内容が過去数年にわたり改善していることにも留意している(レバレッジの18 倍への低下、ネットベースのレベル3資産の削減[Tier 1資本の約35%]、流動性プールの700億米ドルへの拡大、09年の増資による自己資本の強化[Tier 1コモン資本比率は11 年9月末時点で13.7%]など)。また、リスク管理強化に向けた投資と、リスク選好の管理強化を経営陣が重視していることも認識している。
また、野村が、リテール・ブローカレッジ業務、アセット・マネジメント業務、国内資本市場業務を含む、強固な国内営業基盤を有していることにも、ムーディーズは留意している。同社の国内営業基盤は、強固なネットワークと高い市場シェアを有しており、同社の格付けを支える要因になっている。しかしながら、これらの事業規模と収益は、海外資本市場業務のリスクを相殺するには十分とはいえない。
見直しにおいては、(1)野村の国内市場における大手金融機関としての役割と、(2)日本銀行による必要に応じたシステミック・サポート提供の可能性が、債権者に付加的な便益をもたらすか否か、などの要因も考慮に入れていく。
なお、昨今市場において、オリンパスの含み損失に関して、国内証券会社の関与があったのではないかとの憶測があるが、野村証券が関与したという事実の認識はなく、これについては今回の野村の見直しの要因とはなっていない。
また、野村の欧州周辺国へのネット・カントリー・エクスポージャーは、35.5億ドル(時価評価ベース)と公表されている。これは同社にとって、管理可能な水準であるとムーディーズでは見ており、今回の見直しの要因とはなっていない。ムーディーズは、野村証券の長期シニア無担保債務格付けBaa1と、短期シニア無担保債務格付けPrime-2 についても、引き下げ方向で見直しの対象とした。
格上げ・格下げにつながる要因
野村の格上げにつながる要因としては、現状、格付けは引き下げ方向で見直しの対象となっており、格上げ方向での圧力はない。
野村の格下げにつながる要因としては、上述の要因に加えて、(1)国内営業基盤の業績悪化により収益が悪化した場合、(2)リスク選好が著しく高まった場合、(3)リスク管理の失敗により大規模かつ想定外の損失が発生した場合、などが挙げられる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら