トランプ氏「挽回」とハリス氏「熱狂の持続」の条件 党内バランス保つハリス氏の「政策シフト」にリスク

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現状、ハリス氏の支持率はバイデン氏を上回るが、人物を特定しない民主党大統領候補の支持率とほぼ一致している調査結果もある。つまり、今後、共和党がハリス氏の問題点を効果的に国民に伝えていくことができればトランプ氏の勝算もある。

ただ、トランプ氏が共和党の強みである政策に焦点をあてた選挙活動を展開できない可能性も大いにある。それはトランプ氏が、7月中旬の共和党全国大会や8月の記者会見で原稿を読まない場面で露呈した。

トランプ選対本部は過去の選挙戦と比べ、プロが揃い充実した体制となっている。しかし、現在のようにトランプ氏本人が報道官となり、発信する場面が増えれば、選対本部が狙っているハリス氏の「弱み」に付け込む戦略が実行されない可能性もある。

トランプ氏の攻撃材料が支持者集会の規模、選挙不正疑惑などに脱線することが続けば、第1次トランプ政権時代に連日報道されたホワイトハウスの混乱を国民に想起させかねない。

効果的なネガティブ・ニックネームを繰り出せるか

2024年大統領選予備選で敗退したニッキー・ヘイリー元国連大使は「(約)80歳の大統領候補を先に引退させた方がこの選挙に勝利する」と予備選が始動したばかりの2024年1月に予言していた。現状ではその通りとなる可能性が高まっている。

「邪悪なヒラリー(Crooked Hillary)」、「低エネルギージェブ(Low Energy Jeb)」、「嘘つきテッド(Lyin’ Ted)」、「寝ぼけジョー(Sleepy Joe)」など、これまでトランプ氏が破ってきた民主党大統領候補あるいは共和党予備選の対抗馬に対しては、有権者の脳裏にマイナスイメージが刻み込まれるニックネームが効果を発揮してきた。

現状、「クレイジー・カマラ(Crazy Kamala)」、「爆笑カマラ(Laffin’ Kamala)」などさまざまな名前をトランプ氏は試しているが、いまだに効果的なニックネームは存在しない。

いずれ、ハリス氏の弱点をつかんだニックネームが定着すれば、トランプ氏は挽回軌道に乗るかもしれない。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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