バイデン氏撤退後、トランプ氏はいまだに選挙戦で軌道修正ができていない。
高齢懸念から脆弱でアメリカ政治の主流派といったイメージが先行したバイデン氏に対し、トランプ氏は自らをアウトサイダーとして位置づけ、優位な立場を築き上げた。その戦略はあまりにも効果的で、バイデン氏を撤退に追いやるところまではよかったが、トランプ陣営の予定は狂った。
マイノリティ女性でトランプ氏よりも約20歳も年下のハリス氏に対し、同じ戦略では通用しない。大統領選は、バイデン氏撤退までは現職大統領の是非を問う国民投票であったのが、現在は「トランプ氏対ハリス氏」といった構図に変わった。
8月19~22日の民主党全国大会で、ハリス氏はトランプ氏との違いを明確にし、カマラメンタムは当面続く見通しだ。
民主党支持基盤の活気が衰えを見せない中、トランプ陣営は焦り始めている。
8月8日と15日、トランプ氏は記者会見を急遽開催した。スタッフに任せておけないと判断し、トランプ氏自らが前面に出てきて挽回を狙ったとみられているが、その効果は見られなかった。
支持者集会の規模にこだわるトランプ氏は、「大勢が集まるハリス氏の支持者集会の写真は、AI加工したもの」と自らのSNS投稿で陰謀論まで主張し始めている。
ハリス氏の弱点は「左寄り」の過去
波に乗るハリス氏だが、大統領候補としての懸念事項も多々ある。
2020年大統領選では特に組織マネジメント能力に欠けていたことが頻繁に指摘される。しかし、本選挙で最大の懸念材料は、ハリス氏のリベラルな政策実績かもしれない。
全米でも最もリベラルなカリフォルニア州の選出であったハリス氏は上院議員時代の2020年、100人の上院議員のうち政治思想がサンダース上院議員に次ぐ2番目に左寄りだと超党派の「GovTrack」は評価した。なお、移民政策では急進左派サンダース氏よりも左寄りの寛容な姿勢を支持していた。
ハリス氏は、共和党が激しく批判した気候変動対策案「グリーン・ニューディール」の起案者の1人でもあった。カリフォルニア州司法長官時代は、同州沖でフラッキング(岩石を砕いてシェールガスを抽出)を行う許認可を与えたオバマ政権を相手に裁判で争って勝利した。
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