だからインスタグラムはSNSの勝ち組になる 「ノロマ戦略」が功を奏するワケ

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ベン・アンド・ジェリーズの広告。右上に「Sponsored(日本語版では広告)」と入っている

たとえば、昨年インスタグラムを使って、アイスクリームの新しいフレーバーを宣伝した、アイスクリームチェーンのベン・アンド・ジェリーズでは、広告をリーチした1000万人のうち、17%が実際に新フレーバーを認識したと同時に、同社に対する好感度を示したという。

3月には米国で新たに「カルーセル(回転木馬)」広告と呼ぶ新たなフォーマットの広告も展開し始めた。利用者が画面を左にスワイプすると、スライドショーのように複数の広告画像を見ることができるほか、広告の下に広告主が自社などのリンクを張れるのが特徴だ。インスタグラムがアプリ外へのリンクを張れるようにしたのは初めてのことで、導入時にはティファニーやバナナリパブリック、サムスン電子などが出稿した(ちなみに、フェイスブックはこれとほぼ同時期に「マルチプロダクト広告」と呼ぶ同様のフォーマットの広告を開始している)。

「広告の目的がブランドのアイデアを伝えるということは従来から変わらないが、利用者がブランドの世界やブランドそのものについて、それより深く知りたいと思ったときに、(リンクから飛んで)学ぶことができるようにした」(スクワイヤーズ氏)。

微妙なバランスを維持できるか

インスタグラムの広告はもともと「雑誌に近い」との評価で、それゆえブランドの認知度を高めたり、世界観を伝えたりするのに、威力を発揮すると言われてきた。カルーセル方式を導入することで、ページをめくる雑誌により近い「見せ方」ができるようなったわけだ。

今後の展開については、サンドバーグCOOがカンファレンスコールで明示したように、その場で商品が購入できるような機能が追加されるなど、広告主にとってはより直接的な効果を望める広告が展開できるようになるわけだ。

しかし、広告主にとってベターな施策が、利用者にとってもベターとは限らない。というより、だいたいは相反する。ほかのアプリやサービスに比べて、インスタグラムは利用者の思い入れやコミュニティ意識が強く、ユーザー体験に対する期待も高いゆえ、少しでも商業的な面が見えると、一気に拒否反応を示す可能性がある。実際、日本でも広告が始まることがインスタグラム内で告知された際は、利用者から懸念や嫌悪感を示すコメントが多く寄せられていた。

また、インスタグラムが誇るブランドの認知度向上という点についても、「われわれの調査では、一部のクライアントからは思い通りの価値を得られていないという声もあり、今後フェイスブックとの協業でターゲットの精度などを上げる必要がある」(フォレスターズのリウサス氏)。

フェイスブックの傘下に入ることで「時間を買った」インスタグラム。ユーザー体験を変えないまま、しっかりと広告主を満足させられるか。これからが正念場だ。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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