東京メトロの安全は、あのiPadが守っている 電子化が進むトンネルカルテとは?

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7月末の暑さが引かない夜、東京メトロ東西線で行われていたトンネル検査に立ち会う機会があった。

前述のとおり、わずかな時間しかない深夜の作業だ。終電少し前に飯田橋に集合し、そこからトンネル内に入って点検を始める。普段は快適な地下鉄も、終電後のトンネルを歩くとなるとじわり汗がにじむが、地上のそれに比べれば幾分暑さも和らいでいるように感じた。

駅に降りて終電後、架線の電流が止まると、いよいよその日の検査が開始された。トンネルの天井まで近づくことができる台車には照明が取り付けられ、壁面のひびや変色、水漏れを1つも漏らさずていねいに調べる様子を見ることができた。

台車を入れた検査に用いられるiPadを活用した検査アプリ。ビーコンで位置情報を特定しながら、既存の変状の記録を取ったり、新たな変状の記録を素早く行うことができる

作業の記録はそれまで、紙を使って行われていた。バインダーに過去の検査・修繕データ、記録用紙、そしてカメラを持ち歩いていた。しかしiPad導入後は、iPad1枚を、肩からかけられるケースに入れて、検査と記録が行われていた。

シンプルなケースでも耐久性が高いこと、薄くて軽いことは、軽快さが求められる徒歩での検査にとって非常に効果的だったという。しかし、iPadと組み合わせたiBeaconは、検査をさらに素早く、正確なものに変えていた。

10mおきに設置されたBluetoothビーコンを活用する

鉄道路線の位置を把握するには、始点から振られている「キロ程」という数字を頼りにする。トンネル内にもその数字のプレートは振られているが、プレート間の位置も正確に把握する必要がある。

東西線のトンネル区間に設置されているビーコン。10m間隔でBluetoothを活用したビーコンは、トンネル内での位置情報を知り、変状データの記録や通知に活用されている

そこでiPadの導入とともに、Bluetoothのビーコンを設置している。現在東西線のトンネル区間に設置されているビーコンは10m間隔。東京メトロが開発した検査専用のアプリによって、5mごとのブロックで、位置情報を自動的に取得できるようになった。

検査をする際、これまで膨大な量の紙で持ち歩いていた、検査すべき症状(変状)ごとに作成される「トンネルのカルテ」を、iPad向けに開発したアプリでデータとして持ち歩き、過去のカルテが存在する地点に来たら自動的に画面にアラートが表示されるようになり、検査のナビゲート役として頼れる存在になったという。

症状の進行状況や修繕の有無、前回の写真と同じアングルでの写真記録を行って、カルテを更新する。ていねいな点検に対して、非常に素早く記録を行うことができる。

現状の写真を撮影する際、前回の写真が画面右下に表示され、なるべく同じアングルで撮影できるようにしている点はユニークだ。現場の声がアプリ開発に生かされ、より素早く正確な記録が行えるようにする工夫が随所に見られた。

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