トップを極める術はいつの時代も同じ

プロゴルファー/小林浩美

 夏の雲は過ぎ去り、秋の風になってきた。これから旬の食べ物が出回るとともにだんだん秋が深まっていく。

さて、「ゴルフは奥が深いですよね~」と言われることがある。ただ私の場合、そういう観点でゴルフを見たことがない。しかし、確かにいくら練習してもこれで終わりということがない。実際仕事でゴルフをすると、日々の成績の積み重ねの中で、毎日少しでも良くしようと思って練習していることがゴルフの精度を良くしているのだと思う。とてもいいアドバイスやヒントを得ると、目から鱗が落ちた、と言われるが、私もこれまで何百回も目から鱗が落ちている。これまで日米欧ツアーでいろんなプロのスイングを見てきたが、トッププロの打ち方はまず見た目が美しい。そしてシンプルで無駄がそぎ落とされている。さらにバランスがいい。
 これは、国宝の塔に共通すると思う。宮大工さんの本を読んでいたら、平安時代や鎌倉時代に建てられた三重塔や五重塔は、シンプルで均整が取れ、バランスがいいと書いてあった。興味をそそられたので、10カ所以上見て歩いてきたが、実際美しかった。屋根の反り具合といい、全体のバランスの取れた立ち姿、無駄のない装飾。ピカイチの腕を持った宮大工さんの作品は、トッププロのスイングに共通するのだな、と思った。そしてずっと見ていても飽きが来ない、ということも同じだ。

以前、浮世絵師葛飾北斎の仕事に対する姿勢には、とことん驚いたことがある。これこそ、奥が深いということを実際行動に移している人ではないだろうか? 素晴らしい作品をその時々に残しているにもかかわらず、100歳まで生きたら絵を極められると話していたらしい。90歳で天寿を全うしたが、毎日毎日絵を練習で書いていたらしい。30回も改号した中で「画狂老人」には恐れ入った。

いつの時代でも、トップを極める人は、一つのことに向かう姿勢の中に、日々新しい発見があり、楽しさがあり、追求することが面白くてたまらない人なのだろう。とはいってもどんなトッププロもどこかで線引きをし、退かざるをえない。その辞め方は大きく二つに分かれる。一つは体が続くかぎり現役を続けたいと言う人と、もう一つは精神的に燃え尽きたらさっと辞めてしまう人だ。プロゴルファーは肉体労働を伴うので、体力が落ちたから辞めると思われやすいが、実際は精神的な部分が大きいと思う。体が続くかぎり現役で、というのではなく、やりたいから体を鍛え続けていくのだ。
 極める人の多くは、体を鍛錬し、年齢を重ねるとともに精神的にはますます強靱に深みを増していくように感じる。そしてそれは、真剣勝負の積み重ねの中から得られるのだろう。

プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。
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