人生のやり直しにかかる時間「平均5年」は短い? 225人の「人生の岐路」を調べてわかったこと

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だが私が問題と捉えたのは、実際に移行に要した時間ではなく、彼らがどれくらいの時間を予想していたのかである。人々の物の見方や見込み値を調整する責任は、私たちの側にある。

第2に、私たちは人生の大部分を人生の移行に費やしているという事実である。成人期を迎えると、その後3回から5回のライフクェイクを経験し、それぞれがおよそ4年、5年、6年、場合によってそれ以上続くと考えれば、私たちは30年以上を変化のなかですごさねばならない計算になる。

これは人生のおよそ半分にも相当する期間だ!

人生の移行期を最大限に活用する必要があると主張してきた私にとって、これはその大きな理由のひとつになり得るだろう。

人生を無駄に費やさないために

もしもこれを、憤慨したり抵抗したりする期間として捉えると、自分が思うよりはるかに長い年月を無駄に費やしてしまう。人生の価値を見失わず、持てる時間をできる限りうまく受け入れていきたいものだ。

そしてこれが最後の教訓につながる。

かつて詩人のロバート・グレイヴズは、第一次大戦の塹壕での生活を、「騒音が止むことは決してなかった――ほんの一瞬たりとも」と表現している。これこそひとりの人間が、人生の途上で巨大な個人的変化を経験する際の感覚である。

人生は騒がしく、不協和音に満ち、複雑で、混乱し、そしてそれらが止むことなく繰り返されるのだ。

『人生の岐路に立ったとき、あなたが大切にすべきこと』(クロスメディア・パブリッシング)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

移行はこの喧噪を静めてくれる。それは騒音を音楽に戻す、ゆっくりとした非線形の、努力を必要とするプロセスである。

かつて障害を抱える娘を出産したリサ・ポーター教授は、舞台演出やマネジメントなどステージ関連業務を専門とした人物である。彼女は人生の移行と舞台の転換を、美しい喩えで表現してくれた。そうした移行や転換は、レンガをつなぐモルタルのようなものだと彼女は言う。

「レンガはショーや人生の構成要素であり、モルタルにはそれらをつなぎ合わせる役目があります。モルタルが機能しなければ、建物は崩壊してしまいます」

つまり、移行そのものが接着剤であり治療薬なのだ。それは壊れたものを取りあげて修復し、揺れているものに手を添えて安定を図り、形のないものをすくい上げて形を与える。

【訳者略歴】
髙橋功一(たかはし こういち)
青山学院大学卒業。航空機メーカーで通訳・翻訳業務に従事し、その後専門学校に奉職。現在は主に出版翻訳に携わる。訳書に『自信がつく本』(共訳、ディスカヴァー・トゥエンティーワン)、『エディー・ジョーンズ 我が人生とラグビー』(ダイヤモンド社)、『世界の天才に「お金の増やし方」を聞いてきた』(文響社)など。
ブルース ファイラー
Bruce Feiler

ジョージア州サバンナ生まれ。著書のうち7冊がニューヨーク・タイムズのベストセラー。TEDトークの再生回数は400万回を超える。ニューヨーク・タイムズ紙に長年寄稿しているほか、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、ハーバード・ビジネス・レビュー誌、グルメ誌など数多くの出版物に寄稿。

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