複雑な「体操競技の判定」、審判支えるAIの凄み 富士通が国際体操連盟と採点システムを開発

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もともと藤原氏が体操競技に目を付けたのは、人の3次元情報がこれからの時代に役立つと考えたからだ。

中でも体操は「キング・オブ・スポーツ」といわれ、人の動きのすべてを包含しているスポーツ。もし体操の動きを捉えられる技術を実現させれば、ほかのスポーツにも展開できるという狙いがあった。

「日本でのスポーツの位置付けは教育が中心。アメリカのような巨大なエンターテインメント産業でもなければ、イギリスのように文化として完全に成熟しているわけでもない。いつか日本でもスポーツを産業化するような技術、さらには少子高齢化に対応できる技術が生まれるかもしれないと考えている」

スポーツの産業化の観点では、スター選手を生み出し、観客を増やしていくための技術に発展するかもしれない。少子高齢化の観点では、スポーツで培った技術を隣接領域であるヘルスケアに活用して健康寿命を延ばすことができるのではないかという目算がある。この2つのサイクルを同時に回していくことで、新たなビジネスチャンスを捉えたいという。

ヘルスケアやエンタメ分野での活用も視野

こうした新たな活用へのカギとなるのが、JSSで使用されている高精度な姿勢認識技術だ。

例えば、ヘルスケアの分野では、医師や理学療法士など専門家の知見をもとに正しい動作を定義し、患者や生活者の動作をデータ化したうえで、回復期の患者の運動療法や認知予防の医療をサポートできるかもしれない。

また、エンターテインメント分野では、スポーツ選手の3Dデータを活用して、新たな映像体験の実現やフォームなど動きの改善のほか、ゲームやアニメーション製作に活用することも視野に入れている。

実際、すでにプロゴルファーの監修のもと、今までの弾道測定だけでなく、身体の動きを因果分析してゴルフトレーニングに役立てるビジネスもスタートさせている。藤原氏もこう語る。

「現在、JSSは人の動きを正確に捉えることができるHMAというプラットフォームの上に体操競技のアプリケーションを搭載しているかたちになります。ということは、HMAをもとに何を分析するか。そこに可能性と汎用性の高さがある。AIと人間が共存できるポイントとはどこか。私たちはJSSをはじめとした実証実験を重ねていくことで、今後のAIとスポーツ、そしてビジネスの可能性を探っていきたいと考えています」

東洋経済Sports×Innovationでは、スポーツや運動を「知る」「観る」「楽しむ」ことで社会・日常・心身にもたらされるイノベーションを発信しています。
國貞 文隆 ジャーナリスト

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くにさだ ふみたか / Fumitaka Kunisada

1971年生まれ。学習院大学経済学部卒業後、東洋経済新報社記者を経て、コンデナスト・ジャパンへ。『GQ』の編集者としてビジネス・政治記事等を担当。数多くの経営者に取材。明治、大正、昭和の実業家や企業の歴史にも詳しく、現代ベンチャー経営者の内実にも通じている。著書に『慶應の人脈力』『やはり、肉好きな男は出世する ニッポンの社長生態学』『社長の勉強法』『カリスマ社長の大失敗』がある。

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