複雑な「体操競技の判定」、審判支えるAIの凄み 富士通が国際体操連盟と採点システムを開発
JSS開発のきっかけについて、富士通の藤原英則氏は次のように話す。
「2015年に国際体操連盟の幹部の方が『これからはロボットが採点する時代がくるね』と言ったことが始まり。それを真に受けて半年後にプロトタイプをつくって見せたら、『あれは冗談だよ』と言われたが(笑)、冗談で終わらないようにとチャレンジすることにした」
思わぬ一言から始まったが、このとき藤原氏は他社が手掛けてない、誰も見たことがない未来を描く仕事をして、新たな価値を創造し市場を生み出したいと考えていたという。
「誰も見たことがないということは、後から技術を追い付かせていくことになる。しかし、技術者からは『こんなことできるわけがない』と言われる始末。実際の開発がスタートしてからも問題や課題だらけ。本当に10種目の判定ができるのか危ぶまれた。一度は審判からも使えないと指摘され、本当に挫折しそうになった。しかし、そこから技術者を含めたチームの強い結束力が生まれた」
人の動きを高精度にデジタル化
体操は、男子があん馬・つり輪・跳馬・鉄棒・平行棒・ゆか、女子は跳馬・平均台・段違い平行棒・ゆかと全10種目ある。
さまざまな角度から採点するため審判が多く、種目によっては13名の審判が採点することになる。採点では採点規則に基づき、審判が神業的に目視で技を見極めて手書きで採点シートに書き入れるのが通例だった。
だが、技の高度化や複雑化が進み、判定にもより高いスキルが求められるようになり、審判の責任や負荷が高まっていた。
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