複雑な「体操競技の判定」、審判支えるAIの凄み 富士通が国際体操連盟と採点システムを開発

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「開発のブレークスルーとなったのは、動作の計測をセンサーからカメラ映像による画像解析に置き換えたことだった。それまではセンサーでなければ人の動きを捉えられなかったが、生成技術をほかの分野に転用していくためには、カメラのほうが汎用性は高い。カメラ4台(ゆか競技は8台)で多角的に取得した画像データを、骨格認識や技のデータベースとマッチングさせAIで分析を行って採点している」

こうして生まれたJSSの導入で、何が変わったのか。現在、基本的には審判が判定する際のサポートとして利用されている。

とくに審判が判定に迷ったときは、これまでビデオリプレイが使われてきたが、JSSでは3次元のデータを駆使して、審判が確認したい動作を瞬時に確認できるようになった。JSSで出力されるデータは、①Dスコア・難度・グループコード、コネクティッドバリュー、②技名、③CG・骨格データ、④角度・距離、⑤カメラ画像・タイムラインだ。

Judging Support System
審判が判定する際のサポートとして利用されているJSS(写真:富士通提供)

「今は審判が迷ったときに、映像だけで判断しなくてもいいという安心感と、より公正な判断ができるようになった。JSSの利用が拡大していけば、さらに精緻な判定が実現していくと考えている」

トレーニングの精度向上にも期待

今後は、世界大会などにおける審判サポートだけでなく、選手の能力や技の習熟度を評価するなどトレーニング中に活用することも期待されている。

「これまで選手とコーチの関係は感覚の世界であり、定性的な指導が中心だったが、これから定量的なデータを活用すれば、選手自身で競技力を向上させることもできるようになる。そうなればAIが選手をエンパワーメントするといった世界も生まれるかもしれない。しかもJSSは国際的な審判の判定基準を集約させたAIのため、活用すればトレーニングの精度も必ず向上するはず。今はスポーツという人間の世界にAIがいきなり入ってきて、どんな化学反応が起こるのか検証している段階とも言える」

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