「残業削減」以上の収穫、名古屋市立日比津中の「働き方改善」の意外な効果 実際やめた・減らした・変えた・充実させたこと

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意地の悪い見方をすれば、「事例はないですか?」という先生たちには、2つの可能性がある。1つは、事例を探す手間もないと感じるほど忙しい。学校の大変さには共感するのだが、ネット社会なのだし、ものの10分、15分でも参考事例は探すことはできるだろう。その時間も惜しむほど、働き方改革や業務を見直すことに優先度を置いていない、ということではないか。

もう1つの可能性は、「効果的な事例がないから、自校で働き方改革が進まないのは、仕方がないことだ」と言い訳をしたい人たちだ。各校で各自10分でよいので事例を探してきて、もしくはアイデアをリストアップしたうえで持ち寄れば、それなりに改善案は出るのに、そのちょっとした手間をかけようとしないのだ。

校長や教頭の役割とは

では、校長や教頭(副校長含む)は何をすればよいだろうか。

校長等がアイデアマンである必要はない。校長等の役割として大事なのは、改善に向けたアイデアや今の働き方について、教職員の本音や悩みを安心して出せる場をつくることだ。

ただし、話し合うだけでなく、いくつかのアイデアは実際にやってみること、お試ししてみることが必要。ワークショップをいくらやっても、行動につながらなければ、学校はいつまでも変わらない。日比津中に限らないが、やってみると、やってよかった、変えられることがあると実感できることも多い。この手応えが、さらなる取り組みへの原動力になる。

これは、教室での子どもたちも同じだと思う。学校行事などで児童生徒が主体となって動かしてみる。やれる自信を持った子たちは、さらに頑張るようになる。

また、保護者などから疑義やクレームが来たときには、校長等もつらい立場だが、管理職が率先して説明すること、教職員を守ることも必要だと思う。言い出しっぺが損をするようでは、先生たちは安心してアイデアを出せないし、誰かがやってくれたらよいのに、という他力本願な姿勢になってしまう。

何も私は学校にだけ頑張れ、と申し上げたいわけではない。教職員数もギリギリのなかで、子どもたちのためにと、踏ん張っている人もすごく多くて、文科省や財務省、国会議員には、教職員増や学習指導要領上の負担軽減などの政策を強くお願いしたい。同時に、「国が動かない限り無理だ」と学校側(教職員や校長)が早々にあきらめてしまうのも、どうかと思う。

冒頭で申し上げたように、ベルトコンベヤで次々と荷物を処理するような日々で、そういう感覚になるのは自然なことだと思う。だが、そんな日々で、先生たちは満足なのだろうか? あまり面白くないのではないか。リーダーシップや主体性という理念を子どもに対して向ける前に、教職員が発揮していける余地は、まだまだあるように思う。

(注記のない写真:maroke / PIXTA)

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執筆:教育研究家 妹尾昌俊
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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