同時多発テロから米国が学ぶべきこと--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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 またイスラム教徒の多くは、米国の意図に反して、この表現がイスラム世界に対する攻撃であると誤解した。ただし、この誤解はイスラム主要諸国における米国の評価を下げたいビンラディンには都合がよかった。

財源の裏付けがない戦費(1兆ドル以上)が、今日の米国を苦しめている財政赤字の増大につながった分だけ、ビンラディンは米国のハードパワーにダメージを与えることができた。同時テロの真の代価は機会費用かもしれない。なぜなら、今世紀の最初の10年の大半において、世界経済はアジアへ徐々にシフトしたが、米国は中東で、誤った戦争に没頭してしまったからだ。

同時テロの重要な教訓はこうだ──ハードパワーである軍事力はテロに対抗するのに必要だが、複数のアイデアや正当性から成るソフトパワーも、アルカイダが組織に引き入れようとしている主流派イスラム教徒の心をつかむのに不可欠である。「スマートパワー」戦略はソフトパワーの手法を無視しないのだ。

米国にとって、同時テロの最重要の教訓は、米外交政策はアイゼンハワー大統領が半世紀前に行った次の提言にある。「占領を伴う地上戦に関与することなく、米経済の強さを維持することに専念せよ」。この言葉にわれわれは従うべきなのだ。

Joseph S. Nye, Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

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