宮崎アニメに「蒸気機関車」が登場するワケ そこには、アニメ界の大物がいた

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大塚さんとタンク機関車E10・2号機(米原にて)

昭和32年に大塚さんが米原で途中下車したときのこと、駅の構内で巨大なタンク機関車E10・2号機を見つけた。この機関車は、国鉄最後の新形式蒸気機関車として、昭和23年に5両が製造された珍しい機関車で、主に峠の急勾配区間で運用されていた。この機関車は現在、青梅市の青梅鉄道公園に良好な形で静態保存されている。

E10と再会した大塚さん

梅雨の晴れ間の一日、大塚さんを映像作家の金子由郎さんと共に青梅にお連れした。E10は私も小学生の頃、通学路と並走する北陸線でそのサイドビューを見たことがある。D51は4つの車輪(動輪)、C57は3つと覚えていたので、5つある車輪を見たときは驚いた。後にこの機関車がE10型と知ったのは大塚さんが米原で撮影した写真からである。同時期、大塚さんと私は北陸線でこの機関車をリアルタイムで見ていたことになる。こういう経緯をたどり青梅でE10と再会したのであった。

機関車少年達の旅は続く

蒸気機関車の思い出は人それぞれにあると思うが、大塚さんと私はそこにアニメーションが介在して「機関車少年」になった。

今年で84歳になった大塚さんは今もお元気である。大塚さんの記憶にある機関車たちに一台でも多く会うべく、「大塚康生さんと行くSLツアー」を年2度実行している。そのとき機関車少年たちの目は生き生きと輝いている。

大塚さん「機関車少年の機関車絵」は来春、私の責任編集という形で出版される予定である。

(資料提供:鉄道博物館、日本アニメーション文化財団)

南 正時 鉄道写真家

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みなみ・まさとき / Masatoki Minami

1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。

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