VWが「初代ゴルフGTI」を今も大切にし続ける訳 ゴルフ50周年イベントで滲ませたストーリー
トップスピードは時速182kmに達し、静止から時速100kmまで加速するのに要する時間は9秒フラット。当時としては驚異的な高性能で、「GTIドライバーは赤信号が好き」などと言われた。というのは、緑に変わったとき、一列に並んだクルマに一瞬で後塵を浴びせかける瞬発力も自慢だったからである。
フォルクスワーゲンでは当初、GTIのような特別なモデルは「5000台程度の限定生産にとどめておくのが賢明」と考えていたという。
ところが1977年単年をとっても、西ドイツ(当時)だけで2万2000台のGTIが売れた。グローバルでは、なんと約46万2000台。そんなことから、“カルトカー”との異名で呼ばれたほど。
日本にいる私たちも、「どんなクルマなんだろう」と、たいへん大きな興味を持った。しかし、当時の正規代理店はGTIの輸入はせず、日本でゴルフⅠ(初代)といえば、質感が高く、どこか知的で、かつ高いクルマ、というイメージにとどまった。
私はそのあと、幸運にも何回かゴルフIのGTIをドライブする機会にめぐまれた。そして今回のオスナブリュックでも、うれしい驚きが待っていた。ミュージアムで保存されていたオリジナルのGTIを好きに乗っていい、と言われたのだった。
ジュジャーロの「先見の明」
「ホントによく出来たデザインのクルマだ」と、実車のまわりをぐるりと回りながら、私は思った。全長3725mm×全幅1630mmというコンパクトなサイズの車体は、強い凝縮感を持っている。そう改めて感じた。
デザインを担当したイタルデザイン(当時)のボス、ジョルジェット・ジュジャーロ(ジウジアーロ)は、のちのインタビューで次のように語っている。
「私はこのパッケージとスタイルでの成功に自信を持っていたが、フォルクスワーゲンのマーケティング担当などマネージメント層は当初、なかなかそれを理解してくれず、市場で大きく評価されたことが、むしろ驚きだったようですね」
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