自国を捨てる中国人富裕層が過去最多になった訳 3位はインド、2位は欧州の意外な国に

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こうした政策が富の蓄積の足を引っ張り、富裕層の流出を促進しているようだと、アジア開発銀行の米国大使を務めたカーティス・チンはH&Pの報告書で述べている。ただし、中国にはミリオネア(純資産100万ドル以上の富豪)がおよそ86万2400人いるため、国外脱出組はそのごく一部にすぎない。

背景には複数の要因

「米国株はこの2年間ジェットコースターのように乱高下していて、好況とは言えないかもしれないが、欧州各国と比べれば、資産運用でより大きなリターンが見込める。ウォール街はここ数カ月、また記録的な運用益を出し始めた」と、ウィーンに拠点を置く人文社会科学の研究機関「人間科学研究所」のミーシャ・グレニー所長は、H&Pの報告書で指摘している。

中国の富豪が目指す移住先は、アメリカに次いでカナダが第2位。次はEU、シンガポール、日本、香港と続くと、データ解析でH&Pと提携しているニューワールド・ウェルスのトップ、アンドルー・アモイルズは本誌に話した。

アメリカには今年、世界中から3800人のミリオネアが流入する見込みだ。これは、アラブ首長国連邦(UAE)に流入する6700人に次いで第2位で、第3位のシンガポールには世界各国から3500人のミリオネアが移住する見込みだ。

本誌は米国市民権・移民業務局に書面でコメントを求めている。

米シンクタンク「アジア・ソサエティー政策研究所」付属中国分析センターのグオナン・マー上級研究員によれば、中国人富豪の国外脱出の背景には、いくつかの要因が働いているようだ。

第1の要因は、習政権がここ数年、国内のテクノロジー企業への規制を強化していることだ。

英金融サービス会社・リフィニティブのデータによれば、アリババ、騰訊(テンセント)など中国のテック大手5社の株式時価総額は2020年末から2023年7月までに合計1兆ドル以上も縮小した。

規制強化に「地方の起業家が恐れをなし、国外の比較的安全な避難先に逃れようとしているようだ」と、マーは言う。

不動産価格の下落とデフレ圧力で「ドル建てと人民元建て資産の収益格差が広がっている」ことも資産家の国外脱出の増加を促していると、マーは見る。

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