不登校のオンライン学習、出席扱いに比べ「成績評価への反映」が浸透しない訳 壁となる「学校で受ける定期テスト」「校長判断」
「当時は文科省の通知も知られていないし、学校もどう認定すべきかわからなかったんです。具体的な基準が示されていなかったため、僕たちは経済産業省の『未来の教室』の事業として、17の自治体と一緒に認定のガイドラインを作り、1526の教育委員会に配布しました。そうした経緯もあり、当初は僕たちの取り組みが各自治体で初めての事例となることが多かったですね。でも、各自治体で1校でも認定されると、それが事例となって拡大していきます。コロナ禍で多くの学校がオンライン授業を経験したことも後押しとなり、今では学習レポートを提出した学校のうち8割程度は、出席として認めてくれるようになりました」
「登校して受ける定期テスト」が前提の「成績評価」
一方、出席扱いに比べて成績評価の取り組みは浸透していないようだ。文部科学省は、2023年3月の「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策について(通知)」において、「教室以外の学習等の成果の適切な評価の実施」を明記。自宅等でのICT等を活用した学習活動については、可能な限り出席扱いとするとともに、学習評価をして成績評価に反映するよう求めている。
小幡氏も、出席は認定されやすくなったものの、成績評価にはまだ課題があると話す。
「自宅学習を出席扱いとし、成績評価に反映するケースはよくあります。そうした日頃の出席扱いに加えて、登校して定期テストを受ければ高く評価してくれる学校もあります。ただ、学校は基本的に、テストを学校外で受けることを認めません。理想としては、学校のテストを受けなくても、自宅学習や課外活動をきちんと評価されてオール5も目指せるようになるとよいのですが、現状の評価方法では難しい。公平性を担保する技術が出てこない限り難しいかもしれませんが、せめて家でテストを受けられるようになってほしいです。また、出席や成績評価の認定が校長の独断で変わる今のルールは、すごく問題だと思っています。いまだに出席を認めてもらえないケースはありますから」
そう考えるベースには、自身の経験がある。小幡氏は現在、29歳の若さでありながら、複数の事業を手掛ける経営者だが、実は約10年間、不登校だった。幼稚園時代から集団生活に違和感があって休みがちで、小学2年生のときに殴られるなどのいじめに遭って学校に行かなくなった。フリースクールや適応指導教室には通ったが、中学3年生までほとんど学校には登校しなかった。
「クラスジャパンで自宅学習をしている子たちは、『みんなは学校に行っている。自分は本当にこれでいいのかな』と不安に思っていることが多いです。僕自身も学校には行きたくなかったけれど、フリースクールでの活動が出席扱いになり、通知表にも反映されていたことは嬉しかった。子どもたちのモチベーションを育てていくためには、自宅学習の頑張りを学校が認めてくれて成績にも反映されるのはとても大事なことなのです。僕たちの取り組みに対して『安心して高校受験できるようになった』との声もいただいていますが、何よりも子どもたちのやる気やモチベーションを高めることが重要だと思っています」
「学校という箱」にこだわる必要はない時代
クラスジャパンでは、学習だけでなくオンライン上の部活動やホームルーム、発表会などの活動も大切にしており、子どもたちは大きく成長しているという。「企画や発表ができなかった子ができるようになる姿を見ると、すごくうれしいですね。外部のコンテストで受賞したり、自分が学びたいことを研究し続けたりする子もいて、それぞれにみんな頑張っています」と、小幡氏は話す。在籍校への復帰を勧めているわけではないが、受講者の5割程度は学校に復帰しているという。