声でパイロットが「見えてくる」管制官の頭の中 殺到する交信をどうやってさばいているのか
無線交信とレーダーを駆使しながら、超過密の空をコントロールする航空管制。管制官は空港の管制塔やレーダールーム、さらには航空路を見守る航空交通管制部などで、航空機が安全に、しかも効率よく航行できるように「交通整理」を行なう仕事です。
パイロットと管制官のコミュニケーション手段は「声」です。管制官1人に対し、複数のパイロットからの交信が殺到することは日常茶飯事。そのなかで管制官は、どのように的確な指示を出しているのか?
元・航空管制官で現在、航空評論家であるタワーマン氏の著書『航空管制 知られざる最前線』から一部を抜粋し、間断ない離陸・着陸を捌くプロフェッショナルの舞台裏に迫ります。
交信予定のない機が呼んできたら、どうする?
管制官のコミュニケーションは、声だけが頼りです。対面での会議などでは、表情や口の動き、声が聞こえてくる方向などで、誰が誰に向けて発言しているかを感じ取ることができます。しかし、無線交信では音声でしか判断のしようがありません。
もちろん、手元にはレーダーが表示された画面がありますし、外を見れば、交信を行なっている飛行機を自分の目で見ることもできます。また、現在管轄している便情報のリストも見えます。そのなかで、今、まさにこのタイミングで自分を呼んできそうな機、次の指示をほしがっているであろう機を、頭のなかで予測して絞りこみます。
そして、レーダーなどの「目から得られる情報」と「耳から得られる情報」を整合させて、無線の相手を特定し、状況を把握しながら指示を出します。
しかし、自分の周波数帯にいるメンバーは流動的です。今は5人のパイロットと交信していても、いつ6人目が入ってくるかもしれません。
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