あの保険の加入基準が明確に示されない事情 引き受けを断られる病歴・通院歴とは?
「保険者は自ら選択しなければならない。さもなくば逆に選択されるであろう」
ある生命保険会社の「引き受け基準の目安」の冒頭にはこう記されている。
保険者とは「保険契約に基づいて保険料を徴収し、保険事故の発生の際に保険金を支払う義務を負う者」のことで、この場合は保険会社を指す。保険の給付を受ける「被保険者」の対義語に当たる。
この文言の意味することは、保険会社は、今後、入院・手術・死亡する確率が高い人たちが、保険に申し込んでくることを避けたいということだ。「逆選択」という言葉のとおり、病気に対してのリスクが大きい被保険者に逆に選ばれることを最も嫌う。
保険会社が定める「引き受け基準」とは
逆選択を排除するために保険会社が定めているのが「引き受け基準」と呼ばれる加入の可否を判断するための基準だ。500以上におよぶ病名・疾病名一つひとつに基準値や引き受けの目安が設けられており、その基準は各社によって異なる。
保険会社は、この病気に関する引き受け基準に照らし合わせて被保険者の体況(保険用語で健康状態のこと)を判断するとともに、身長や体重、職業や年収、過去の給付金請求歴などさまざまな要素を加味して、保険を引き受けるか否か、保険金額でいくらまで引き受けるかなどを判断する。
保険会社の事業運営の核となる保険の引き受けは、機密情報であり、この基準の詳細は門外不出だ。消費者は当然ながら、保険会社の査定部門の社員以外にも知らされることはほとんどない。保険会社が引き受け基準をひた隠しにするのは、保険への謝絶の理由を教えてくれないことにも表れている。
記者がA生保会社の保険に加入するために膨大な個人情報を入力したにもかかわらず、月曜日の営業開始からわずか数時間で謝絶の結果が送られてきた。不整脈が謝絶の原因と感じながらも、「本当にしっかり査定をしてくれたのだろうか」と疑念が浮かんだ。これは、後日わかったことだが、A生保は「自動査定システム」を導入しており、引き受けの謝絶の判断も早いが、引き受けOKの判断も早いようだった。
ただ、あまりにも早い謝絶の連絡に“冷たさ”を感じるとともに、個人情報に対してのセキュリティに不安が残った。気を取り直して翌週の日曜日の同時刻に、A生保とほぼ同時期に開業したB生保に定期(死亡)保険を再び申し込む。
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