2月にOpenAIを退職した研究エンジニアのウィリアム・サンダースのほか、OpenAIの元社員3人もメンバーに名を連ねている。ココタジロによると、同社の複数の現役社員は会社からの報復を恐れ匿名で書簡に賛同した。グーグルで中心的なAI研究機関となっているグーグル・ディープマインドの現職社員と元社員も、それぞれ1名ずつ署名している。
OpenAIの広報担当リンジー・ヘルドは声明で次のように述べた。
「私たちは、最も有能で最も安全なAIシステムを提供してきた実績を誇りに思うと同時に、リスクに対処する当社の科学的アプローチに自信を持っている。このテクノロジーの重要性を踏まえると、厳格な議論が必要なのは間違いなく、今後も政府、市民社会、そして世界中のさまざまなコミュニティーと連携していく」
グーグルの広報担当者はコメントを辞退した。
クーデター、法廷闘争、幹部退社の根本原因
今回の内部告発はOpenAIにとって厳しいタイミングで浮上した。同社は、昨年のクーデター未遂からの回復途上にある。この事件では、取締役会のメンバーがCEOのサム・アルトマンに不信感を募らせアルトマンの解任を可決。ところが、アルトマンは数日後に復職し、取締役会も新しいメンバーで再編成された。
OpenAIはまた、コンテンツ制作者たちとの法廷闘争にも直面している。著作権で保護されたコンテンツを盗んでAIモデルのトレーニング(学習)に使ったとして訴えられているのだ(ニューヨーク・タイムズは昨年、著作権侵害でOpenAIとそのパートナーであるマイクロソフトを提訴した)。
さらに、最近発表した極めてリアルな音声アシスタントは、無断で声を模倣されたとハリウッド俳優スカーレット・ヨハンソンに大っぴらに抗議されたことで評判に傷が付いた。
そうした中でも、OpenAIが安全をあまりにもないがしろにしているという今回の批判のパンチ力は突出している。