任天堂「スプラトゥーン」はなぜヒットしたか 売り切れ続出するWii Uソフトの魅力と課題

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しかし、筆者自身はそうした不可抗力による不具合や、人数の偏りはさほど問題視していない。最大の問題はフェスによる新しいゲーム体験がまたく提供されなかったということだ。

ごはん派とパン派がそれぞれチームを組んで相手と戦うという新機軸はあったものの、結局は味方も対戦相手も、たくさんいるごはん派、パン派の中からランダムで組まれるのであり、そのゲーム体験は普通のナワバリバトルそのものでしかなかった。

また、フェス中は別モードであるガチバトルがプレイできないために、結局はみんながいつものナワバリバトルをプレイすることを余儀なくされた。画面上は、ゲーム上に登場するアイドルユニットの「シオカラーズ」が踊り、画面にたくさんのユーザーが自分を模して作ったキャラクターの「Mii」をネットワークでつなげる「ミーバース(Miiverse)」の投稿絵が並んで、平時とは違う盛り上がりを見せたのだが、筆者個人は「早くフェスおわんねーかな」という心情でいっぱいだった。

フェス中のゲームがナワバリバトルとまったく同じで、特別な何かをまったくといっていいほど用意していなかったというのは、完全に運営上の失態だろう。ナワバリバトルが面白くないわけではないが、せいぜい一日のこと、せめて武器が両チームとも固定であるとか、もしくは特別なアイテムが出るとか、たとえゲームバランスを崩すような事があったとしても、ゲーム内容そのものに関わるような、普段のゲーム性とはまったく異なる、特別な体験が欲しかったのは、いちユーザーとしての感想でもある。

2回目のフェスが開催されるも…

本稿を書いている時点で、東洋水産とのコラボレーションで「赤いきつね vs. 緑のたぬき」のフェスが行われている。多くのユーザーを困らせたマッチングの問題は解消されたが、筆者の懸念である新たなゲーム体験が得られないということについては、前回と何も変わらないようだ。

ぜひとも挽回を期待したいのだが、今のところプラトゥーンには課金要素はなく、パッケージ売り切りの金額設定である。現時点で発売後半年ほどのアップデートが予定されているものの、課金要素がないということは、あらかじめ設定されたアップデート以上のサービス提供は期待できないということでもある。

過去の人気シリーズのナンバリングタイトル頼みの印象が強いWii Uに、久しぶりに現れた注目の新ソフトだ。ゲーム好きとして、今の人気のままで終わることなく、もう一歩突き抜けてほしいと願っている。
 

赤木 智弘 フリーライター

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あかぎ ともひろ / Tomohiro Akagi

1975年栃木県生まれ。2007年にフリーターとして働きながら『論座』に「『丸山眞男』をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。」を執筆し、話題を呼ぶ。以後、貧困問題などをテーマに執筆。主な著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』などがある。

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