任天堂「スプラトゥーン」はなぜヒットしたか 売り切れ続出するWii Uソフトの魅力と課題

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オンラインでユーザー同士が対戦するゲームは、ゲーム業界の中で大きな市場ではあるものの、いわゆる熟練した「ガチ」なプレイヤーが多く、新参者が少し興味をもって参戦しても、いいように弄ばれてしまいゲームを楽しめないことがあった。

もちろん、スプラトゥーンもオンライン対戦型なので、これまでこの手のゲームをやり慣れた人が有利であることは言うまでもない。一方で、相手に照準を合わせることすらままならないプレイヤーでも、スプラトゥーンであれば、手探りなりに楽しむことができる。

それはなぜか。メインモードである「ナワバリバトル」を前提に説明していきたいと思う。

新参者にも入りやすい設定

スプラトゥーンが新参者にとって入り込みやすい理由は、ゲームデザインとして「床を塗っていればチームの勝利に貢献できる」ということが明確だからだ。

スプラトゥーンはその派手な色合いが多くの人を引き付けているが、その色は決して見てくれだけのために派手なのではない。派手に塗りまくられたインクの色は、ゲームの勝敗を決定する最も重要な要素なのである。

ナワバリバトルはオンラインでランダムに選ばれた仲間4人で組み、同じくランダムに選ばれた4人の相手と3分間戦い、最終的に多くの床面積を自分の色に塗ったチームが勝ちというルールだ。だから闇雲にインクをばらまいていても、少しずつ勝利に近づくことになる。やはり武器を撃つゲームをプレイするからにはガンガン撃ちまくりたいものだ。その要望通り、プレイヤーはガンガンとインクをばらまきながら前線に進んでいくから、とても爽快だ。

そして、ゲーム終了後に得られるポイントも、床を自分のチームの色に塗った面積で決定され、相手を倒した数や倒された数はポイントにならず、隅に小さく表示されるのみである。このことからナワバリバトルでは、何も考えずに気持ちいいままに床を塗っていた新参者のほうが、高いポイントを得やすいのである。

では、オンライン対戦ゲームの醍醐味である、他プレイヤーとの攻防は不要なのか? もちろんそんなことはない。敵を倒せば相手の侵攻を止められ、相手の色に染まった床を一気に塗り返すことができる。

武器から発射されるインクは、床を自分チームの色に塗るためのものであると同時に、相手を倒すための弾丸でもある。次々に床を塗りながら先に進んでいれば、いずれ敵と遭遇する。その時、目の前には相手の色に塗られた床が見える。新参者であっても床のインクの色を見れば、パッと見た目で「ここから先は相手の陣地。いつ攻撃されるかもしれない」という心構えをもって進むことができる。

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