2012年に向け緊迫する米中関係、米中台で政権交代?!《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》
その愛国発言も過去に物議を醸した。2009年2月、外遊先のメキシコで、人権問題で圧力を掛ける米国に対して「腹がいっぱいになって暇になった外国人がわれわれの欠点をあれこれあげつらっている」「中国は革命も輸出せず、飢餓や貧困も輸出せず、外国に悪さもしない。これ以上いいことがあるか」と述べた。この発言は海外では問題視されたが、中国国内では愛国的と肯定的に受け止められた。
10年10日には、朝鮮戦争60周年の記念行事で「朝鮮戦争は平和を守り侵略に立ち向かった正義の戦争」と発言。韓国から反発を招いたものの、中国国内では、この発言も愛国的と受け止められた。政権交代直後に人心を掌握するため、大衆を意識する習氏が平易でストレートな言葉で愛国的な発言をすることは十分考えられる。その対象はアメリカになるだろう。
台湾・北朝鮮も導火線
次に、台湾の総統選挙。中台関係は中国寄りの国民党・馬英九総統のもと非常に良好であった。しかし、情勢は台湾のナショナリズムをあおる民進党候補に有利に動きつつある。民進党候補が、国民党の現職馬総統に勝つ可能性は十分ある。その時は中台間は、今のようにスムーズにはいかない。アメリカも中台の関係の変化を対中政策のカードに使う動きを見せるかもしれない。
最後はもう一つの政権交代。そう北朝鮮である。ここでも金正日から息子・金正恩への政権交代が進行中だ。ここで何か暴発的な事件が起き、政権交代が順調に機能しないおそれもある。北朝鮮の今後のベストシナリオについて同床異夢である米中は朝鮮半島での有事をめぐって緊迫する可能性がある。
こうしてみてみると、米中関係に地雷はたくさん埋まっている。来年へ向けて米中関係から目が離せない。
たむら・こうたろう
ランド研究所シニアフェロー、前参議院議員
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