分福茶釜とは、どんなお話なのか。茂林寺に伝わるものを簡単にまとめると、次のようになる。
代々の住職に仕えていた老僧が、千人法会の折にどこからか1つの茶釜を持ってきた。その茶釜は、不思議なことにいくら湯を汲んでも湯が尽きなかった。老僧は自らこの茶釜を紫金銅分福茶釜と名付け、この茶釜の湯で喉を潤すと開運出世・寿命長久などの功徳に授かると言う。ただ、その後老僧は寝ている間に狸の姿を現してしまい、正体が露見。最後に源平屋島合戦と釈迦の説法の場面を再現し、狸の姿になって茂林寺から去った――。
世に流布する分福茶釜のお話は、これをもとに脚色されたものがほとんど。ただ、共通しているのは湯が尽きない不思議な茶釜と人を化かす狸の物語、ということだ。そんなわけで、茂林寺前駅の駅前にも、狸の置物が鎮座する。信楽焼でよく見かけるアレだ。そして、そのまま駅前の道を案内板に従って進んで行くと、狸に化かされてどこかへ……ではなく茂林寺へ。
映画の舞台になった
ちなみに、分福茶釜や茂林寺、そして茂林寺前駅は、1963年に公開された映画『喜劇 駅前茶釜』に呑福茶釜・呑福寺として登場している。森繁久弥やフランキー堺が出演するドタバタ喜劇で、時代を感じるナンセンスなシーンも目白押し。そして、その中では門前町も描かれている。
映画の中でのにぎわいぶりとは、いまはかけ離れたものだ。それでも、分福茶釜と茂林寺の存在感が損なわれることはないだろう。少なくとも、この駅はいよいよこれから本格的にはじまる伊勢崎線の北関東の旅の入り口なのである。
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