税関職員はさらに分解を続け、歯車などを外してモーターのコアを取り出した。すると、その両端に不自然な接着剤の跡が見つかった。次に小型のハンマーを使って調べると、軽く叩いただけで表面に凹みがつき、このコアが比較的柔らかい金属で作られていることが判明した。
事ここに至り、税関職員はこのコアが本物ではないと確信。表面の銀色の塗装を削り取ると、下から金色の地肌が現われたのだった。
その後、税関職員はもう1台の空気圧縮機も分解して徹底調査。モーターのコアだけでなく、ポンプ内部のスクリューローターも金の鋳造品であることを発見した。
1億6000万円超の脱税企む
「税関の目をすり抜けるため、空気圧縮機の部品を金で鋳造するという、密輸グループの手の込んだ偽装工作だったと確信している」。香港税関空港分署の責任者は、事件の背後をそう分析する。
香港税関で組織犯罪の捜査を担当する劉玉龍氏は、上述の空気圧縮機の輸出手続きにかかわった自称会社役員の31歳の男性を、4月3日に逮捕したことを明らかにした。
密輸グループは事業実態のないペーパーカンパニーを設立し、国際物流会社に輸送を委託することで、空気圧縮機(の内部の金)を日本に持ち込もうとしたとみられている。仮に密輸出が成功していたら、脱税額は約840万香港ドル(約1億6283万円)に上った可能性がある。
(訳注:日本国内では金地金の売買に10%の消費税がかかる。そのため、海外の非課税の国・地域で調達した金地金を日本に密輸しようとする犯罪が増えているとされる)
(財新 駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は4月9日
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