岸田首相、裏金議員に「甘すぎる処分」で墓穴掘る 際立つ「ご都合主義」で"内ゲバ"、政権危機拡大

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その背景には「政界引退を表明した二階氏を処分なしとし、それに合わせて武田氏も軽い処分とすることで、岸田首相自身の政治責任も逃れる思惑があった」(安倍派幹部)との見方が多く、「それが自民党内に反発を広げる要因」(同)となったのは否定できない。

離党した世耕氏、「衆院くら替え」断念せず?

そうした中、最も重い「離党勧告」という処分を受けた世耕氏は4日夜、党執行部に離党届を提出、直ちに受理されて自民党を離党した。その際同氏は記者団に対し「国民に大変大きな政治不信を抱かせることになり、心より深くおわびしたい。離党勧告が出されたことを受けて、政治的責任を取って自民党を離党することにした」と語った。

そのうえで同氏は「今後は、議員としての仕事を一生懸命やることに徹したい」と議員辞職を否定。記者団から「衆議院にくら替えして立候補する意向はあるか」と問われると「1日1日議員活動を懸命に務めていくということに尽きる」と答えるにとどめた。ただ、同氏周辺は「選挙に自信を持つ世耕氏は、無所属になっても衆院くら替えの意思は捨てていない」と漏らすなど、政敵の二階氏との確執はなお続きそうだ。

一方、「離党勧告」処分に「全く納得がいかない」と強く反発していた塩谷氏は5日午後、国会内で記者会見し、党規律規約に基づき、岸田総裁(首相)への再審査請求を検討していることを明らかにした。実際に請求すれば、党総務会が扱いを議論し、「相当の理由」があると認められれば党紀委が再審査することになる。

岸田首相は処分を決めた4日も、官邸に多数の外務省幹部を集め、9日からの国賓としての訪米の事前準備を進める一方、アメリカ公共放送のインタビューに応じるなど「問題を引きずらないいつもの岸田流」(側近)で政権運営への自信をにじませている。

これに対し、野党側は「もはや岸田首相は“死に体”」(立憲民主幹部)として、4月下旬にも設置される「政治改革特別委」を主舞台に、関係議員や森氏の証人喚問などを要求することで岸田首相を追い詰める方針だ。現状では自民党が「全会一致」を盾に拒否する構えとされるが、その対応自体が野党だけでなく国民の強い自民不信につながることは確実で、今後も政権危機の拡大が岸田首相を追い詰める展開となる可能性が大きい。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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