Supreme新作を「買える人」「買えない人」本当の差 現在社会で早い者勝ちがもはや通用しない訳
行列代行業のセイム・オール・ライン・デュードに雇われた並び屋の1人は、人気番組『シャーク・タンク』(起業家のプレゼンに対して投資家が出資の有無を決めるリアリティ番組)のオーディションに出るための行列に43時間並んだという。セイムの創業者ロバート・サミュエルのほうが、お金を払って並んでもらった起業家候補より起業家として優秀だったことはまちがいない。
ボットが瞬時にチケットを買い占める
同様の現象はオンラインでも起きている。ミュージカル『ハミルトン』は、初演から何年も経つというのに、いまだにブロードウェイで売り切れ続きだ。ウェブサイトではチケットを通常の方法で、つまり早い者勝ちで販売している。
問題は、抜け目のないテック系の転売業者がコンピュータ・プログラム(事前に決められた処理を自動で実行するプログラムで「ボット」と呼ばれる)を開発し、発売と同時に一瞬でチケットを全部買い占めてしまうことだ。
その結果、ミュージカルの興行主や出演者はチケットの額面通りの金額しかもらえないのに対し、ファンのほうはプレミアムを上乗せされたチケットを転売屋から買わなければならない。チケット販売サイト、スタブハブなどでは、もとの何倍もの値段で売っている。
こうしたわけだから、チケット転売業者は『ハミルトン』の興行主以上の利益を手にすることになる。ボットがマウスを使う人間より常に早く買い占めてしまうとしたら、早い者勝ちのルールは何の役に立つだろう。だからと言って『ハミルトン』が劇場のチケット売り場だけで販売することにしたら、今度は行列代行業者が現れてさっさと行列の先頭をとってしまうにちがいない。
伝説的なロックシンガー、ブルース・スプリングスティーンは、ブロードウェイでソロコンサートをやることになったとき、別のアプローチを試みている。チケット販売大手のチケットマスターが発足させた「ヴェリファイド・ファン」という新たなチケット販売システムを採用したのだ。
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