「高齢者の運転事故」は糖質・塩分摂りすぎを疑え 「脳ドック」データでわかった意外な因果関係

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糖質を摂りすぎると血糖値が上昇し、これが肥満や糖尿病の原因になります。肥満や糖尿病は、神経の障害、目の障害、腎臓の障害、脳梗塞や心筋梗塞など、ありとあらゆる合併症のリスクがあり、まさに“万病のもと”といえるのです。だからこれだけ、糖質制限に注目が集まっているのでしょう。

そして最近は、糖尿病が脳にダメージを与えやすいこともわかってきました。私の脳ドック研究においても、糖尿病の人に「白質病変」が出やすい傾向にあることが明らかになっています。

安全運転の天敵「白質病変」を増やす要因

白質病変とは、加齢、高血圧等の生活習慣病、喫煙、生活習慣の乱れなどによって生じる脳の毛細血管を中心とする脳虚血病変のことです。40代までは喫煙者以外ほとんど発生しないものの、50代くらいから増え始め、60代以降に急増し、80代では半数以上の人に認められます(著者主宰脳ドック施設でのデータ分析より)。

私はこれまで、数万件に及ぶ脳ドック診察を行い、さらには事故を起こした人への聞き取り調査をとおしてMRIデータと照合するなどの研究を重ねた結果、白質病変(MRI画像の高信号域)と脳萎縮(脳室・脳溝・硬膜下腔の拡大)が進むと、交通事故や危険運転を起こす可能性が高まるということをつきとめました。

つまり、以下のような展開が考えられるということです。

糖質を過剰に摂取する→糖尿病になる→高齢者は脳に「白質脳症」が出やすくなる→運転をする際に必要となる機能をつかさどる脳(=運転脳)が衰える→交通事故や危険運転を起こす可能性が高まる!

なんと、糖質を摂りすぎると、高齢ドライバーの安全運転が脅かされるのです。糖質は、ケーキなど甘いものだけでなく、イモ類を原料としたお菓子や料理、主食といわれる、ごはん・麺・パンにもたくさん含まれます。

すべて身近なものであり、普段から食べているものでしょう。それが安全運転と関係があるとは思ってもみなかったはず。しかし、無関係ではありません。糖尿病になるリスクを高めるのと同時に、高齢ドライバーが事故を起こす可能性を高めてしまうのです。

食事の際に気をつけるべきなのは、糖質だけではありません。同時に気を配りたいのが塩分です。塩分は五大栄養素を形成する「ミネラル」の一員で、糖質と同様、人間が生きていくためには必要な栄養素なのですが、こちらも過剰摂取が体に悪影響を及ぼします。

塩分を過剰に摂取すると喉が渇き、体が水分を欲します。そして水をたくさん飲むと、増えた水分量のぶんだけ血液が多く作られ、血管にかかる圧力が上昇します。つまりこれは、高血圧です。

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