日経平均株価がITバブル高値に接近 2日間で600円超上昇、買いは続くか
[東京 23日 ロイター] - 日経平均<.N225>が2000年4月につけたITバブル時の高値2万0833円に接近した。ギリシャ問題の進展期待に加え、日本の成長戦略への評価も高く、海外勢の買いを誘ったとみられている。ただ、急ピッチの上昇で過熱感も強まっており、ここからの上値追いは限られるとの見方も出ている。
持ち合い株解消に海外勢が高い期待
23日の日経平均は、前日比で350円を超す2万0809円まで上昇。ITバブル時の高値にあと24円に迫った。ドル/円<JPY=EBS>は123円台後半にとどまっているが、三菱UFJ<8306.T>やみずほ<8411.T>、第一生命<8750.T>など金融株がけん引した。
金融株の買い材料となったのが、政府が22日に提示した「日本再興戦略」改訂2015(素案)における成長戦略だ。
金融機関のガバナンスや経営体質などの強化に向けた「独立社外取締役の選任」や「政策保有株式の縮小」、3メガバンクにおける経営支援機能の発揮を目的とした「株価変動リスク等の縮減」などを盛り込んだ。
持ち合い株式について「議決権行使のあり方の検討」や「保有目的の記載」にとどまっていた前回の成長戦略とは一線を画し、持ち合い解消に向けて一歩踏み込んだことが評価されたという。
メガバンク3行の政策保有株式は、推計で6.4兆円。売却資金で自社株買いを実施すれば銀行株にとって需給面での後押しとなりやすいが、政策保有株式の放出は市場全体に重しとなる可能性がある。
需給的には決してプラスとは言えない材料だが、市場では持ち株解消が日本企業のコーポレート・ガバナンス改善につながるとの期待が大きい。
ゴールドマン・サックス証券アナリストの田中克典氏は、今回の持ち合い解消に関する言及を受けて「政策保有株の問題を成長戦略で取り上げることは、コーポレートジャパンとしての課題であるということの明確化の表れであり、(政策保有株売却の加速に必要な)事業会社の理解を得る上では、重要なポイント」と指摘した。
BNPパリバ証券・日本株チーフストラテジストの丸山俊氏も「金融株は金利低下に伴い足元で調整していたため、いったん見直し買いや買い戻しが入った側面も大きい」としながらも「海外投資家にとって、持ち合い解消の動きは日本のガバナンス改善の象徴として重要視され、日本株に対する評価が高まりやすい」と述べている。
今回の「日本再興戦略」では、ロボットやIoT(インターネット・オブ・シングス)、ビッグデータの活用など生産性の向上が掲げられ、CYBERDYNE <7779.T>や菊池製作所 <3444.T>など関連銘柄への物色を誘った。「息の長いテーマ株として物色されやすい」(松井証券・シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏)という。
ポジション整理一巡で需給改善
上値をとっていく買い方は、やはり海外勢が主体とみられている。6月第2週と第3週の海外投資家による日本の現物株と先物合計の売買は、計1兆0674億円の売り越しとなっており、ポジション整理の進展で買いも入れやすくなっていたようだ。
6月12日のメジャーSQ(特別清算指数)通過に伴い、裁定買い残高は24億株台から足元で17億株台へと大幅に減少。短期筋による売りは一巡したとみられている。今週は株主総会がピークとなるため、信託経由の売りが出にくく株高地合いが崩れないとの期待も出ているという。
22日のユーロ圏緊急首脳会議で、ギリシャ政府が新たに提出した財政再建策を評価し、週内にも支援策の合意に至るとの期待が広がった。ギリシャ問題に対しても楽観的な見方が広がったことで「欧米株が大幅に上昇し、海外投資家を中心にリスクをとりやすくなった」(大手証券)という。
6月第4週以降は「6月決算を確定させた欧米投資家が、新たな資金を配分する傾向がある」(大手証券トレーダー)との指摘もある。朝方には海外投資家とみられる大口の買い注文が複数観測され、売り方の買い戻しを誘ったとみられている。
もっとも、日経平均は2日間で600円を超す上昇となり、急ピッチな上げに対する警戒感から、上値は限られるとの見方もある。
みずほ証券・シニアテクニカルアナリストの三浦豊氏は「米国株の上値の重さが気掛かりなうえ、日本株の割安感も乏しい。ITバブルの高値は更新しそうだが、日経平均2万円─2万1000円のレンジ相場となりそう」との見方を示している。
(杉山容俊 編集:田巻一彦)
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