苦情対応歴30年のプロが語る「モンスターペアレント対応」こじらせないコツ トラブルが長引く原因は「教師や学校」にある

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まずは前述した、「対面」が一番解決しやすいということは覚えておいてほしい。電話は資料を見ながら話せる利点はあるが、声だけでは相手の表情が読み取れない。メールや連絡帳でのやり取りも、相当慣れないと相手の心理の奥は読めないものだ。

また、相手の話をよく聞き、まず確実な事だけをその場で答え、あいまいな点は預かって調べたり管理職に確認したりしたうえで回答するのがよい。反論したいことがあるならばなおさらだ。回答するといっても、単に回答を述べるのではなく、打診をするような姿勢で下手に出ることが大切になる。理不尽な要求は毅然と断るべきだが、学校側に原因があれば、謝罪の姿勢を取りたい。

対面時は、身振り手振りも重要だ。話しやすさを引き出すためには、とくに「目線」は意識したい。直視は双方話しづらいので避けよう。こちらの目線を相手の鼻筋と鼻頭の真ん中あたりに置くと、相手から見て伏し目がちに見えるので、威圧感を与えずに話を進められるだろう。

目を閉じたり、首を動かしたりといった所作は、相手の話しやすさを生むため、相づちを打ちながらうなずくことも大事だ。手をもむ動作は相手の気をそこに向けさせ、言葉の怒気を抜く効果がある。

苦情の中にも当然、相手の勘違いだったということはある。その割合は、日本苦情白書のデータによれば、23%。苦情そのものが勘違いの場合もあるが、会話の中に勘違いが含まれている可能性もあるため、会話はメモに取ること。そして相手の勘違いが明らかな場合は、柔らかく確認することをお勧めする。

相手が激高した際に、怒りを収める手段は2つある。1つは対応者を代える、もう1つは、対応の場所を変えることだ。その行為は、申し入れ者が自分の気持ちを整理する時間となる。

さて、こうした対応のポイントを押さえながら、できれば苦情を「相談」に置き換えて、信頼を回復する技術も身に付けたいものだ。

相手がこちらの対応にうなずく時は、納得した、または、納得する可能性の表れである。そのタイミングがつかめたら、「大変貴重なお話を頂戴し、感謝申し上げます。うまく対応はできないかもしれませんが、ご納得いただけるよう努めます」「今回のご相談をいただけたことで、学校も新たな視点が見えました、今後はこれを生かして臨んで参ります」と伝えると解決に向かいやすい。

人間対応というものは難しい。答えが複数あることも、対応を難しくしている。反面、保護者も人の子であり、うまく向き合うことができれば、話がまとまる可能性は大だ。しかし、トラブル解決のためには、適切な会話の運び方や接し方が重要になる。

今回は字数に限りがあるため対応のポイントにとどまる紹介になったが、こうしたスキルを教師が身に付けることができれば、結果的に本業がはかどり、子どもたちにもっと時間を使うことができるようになるはずだ。

(注記のない写真:takeuchi masato/PIXTA)

執筆:関根眞一
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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