自民党議員CAにカスハラ?反論ブログが痛恨な訳 相手の立場に立つべき時に意固地に映らない技

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マーケティングの理論の中では、このコミュニケーション失敗の原因と対策を「企業が提案するのは4Pではなく4C」と表現する。マーケティングの4Pとは、企業が顧客に提案できるものは究極的にこの4つのP「Product:製品・サービス、Price:価格、Place:販売場所、Promotion:情報提供」だとする、非常によく知られた考え方である。

4Pと4Cの対応関係

この考え方自体は正しいのだが、大切なのは、それが顧客にどう見えているかである。企業はProductを提案しているつもりだが、顧客が見ているのはCustomer Value:自分にとっての価値である。企業はPriceを提案しているつもりだが、顧客はCost:負担で見ている。企業はPlaceを決めているつもりだが、顧客はそれをConvenience:利便性で評価している。企業はPromotion:情報提供をしているつもりだが、顧客はそれを企業とのCommunication:対話だとみる。

「3年間、研究開発を重ねたドッグフード」と言ったところで、顧客には響かない。だが「お宅のワンちゃんの健康寿命を延ばすドッグフード」と言われれば、それが欲しかったものだと気がつくことができるだろう。これが4Pと4Cの考え方の端的な違いである。企業目線の事情など、顧客にとっては知ったことではない。顧客目線で語ってはじめて、それは自分の愛犬のために、企業が努力した産物なのだと気がつくことができる。

長谷川氏の反論に足りなかったもの

長谷川氏の反論には、4Cの観点が全く抜け落ちている。自分の言いたいこと(Product)を、相手に読んでもらう負担など考慮せず(Price)、また相手の利便性も気にせずに自分のブログで(Place)、対話など考慮せず一方的に話す(Promotion)。皆さんは無意識のうちに冒頭のわずか数行でそれを感じ取っていたから、こちらの意図がないがしろにされているように感じて、不快感を覚えたのである。

この局面で本来あるべきだった対応は、相手の期待することを(Customer Value)、分かりやすい表現で(Cost)、現代的な利便性の高い媒体を通じて(Convenience)、対話の中で説明すること(Communication)だったのではないか。要するに記者会見で誠実な対応をしていれば――たとえば自分の非を認めて行動をただすことを約束したならば――、それで済んだ話だったはずなのだ。

本件がどれほど氏の政治活動にダメージを与えることになるかは定かではないが、読者の皆さんは事後対応のケーススタディとして、相手の立場に立つべき局面で自分が意固地な4Pモードに入ってしまわないよう、学びに変えてもらいたい。

中川 功一 経営学者、やさしいビジネスラボ代表取締役

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なかがわ こういち / Koichi Nakagawa

1982年生まれ。2004年東京大学経済学部卒業。08年同大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。大阪大学大学院経済学研究科准教授などを経て独立。現在、株式会社やさしいビジネスラボ代表取締役、オンライン経営スクール「やさしいビジネススクール」学長。専門は経営戦略、イノベーション・マネジメント。「アカデミーの力を社会に」を使命とし、経営スクールを軸に、研修・講演、コンサルティング、書籍や内外のジャーナルへの執筆など、多方面にわたって経営知識の研究・普及に尽力している。YouTubeチャンネル「中川先生のやさしいビジネス研究」では、経営学の基本講義とともに、最新の時事解説のコンテンツを配信。

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