「友だちの輪」誕生のきっかけにあの世界的巨匠 ハプニングの宝庫「笑っていいとも!」の魅力

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1984年4月23日のゲストは歌手の泰葉だった。

歌手のしばたはつみを友だちとして紹介しようとした泰葉が電話をかけ、「もしもし、しばたさんのお宅ですか?」と言ったところ、「いえ、違います」という返事。相手は、広告会社の編集部に勤める女性だった。

タモリが引き取って『笑っていいとも!』であることを説明すると、「ちょっと待ってくれます?」とテレビを見て確認した女性は、「間違いでなくていいんですけど」と満更でもない様子。

そのノリの良さを感じ取ったタモリの「明日来てくれるかな?」に「いいともー!」と答え、その女性はなんと翌日「テレフォンショッキング」に出演を果たしたのである。

その日から「一般人コース」が並行して始まった。その女性は通常と同じセットでタモリとトークを繰り広げ、「やだぁ、恥ずかしい」と言いながら友だちを紹介。

そして3人目までつながったが、4人目のひとの都合がつかず、タモリの「明日来れないかな?」という呼びかけに対し、電話の相手が「来れません」と答え、「一般人コース」は結局3日で終了することになった。
これは、『いいとも!』という番組が究極の視聴者参加番組であったことの証である。

観客が演者の一挙手一投足に反応し、放送中に声を上げることも許されていることの延長線上に、このようなハプニングが起こったと言えるだろう。

いきなり観客の男性が……

ただ、そうであるがゆえに唖然とするようなハプニングが起こることもあった。

「『いいとも!』終了」というマスコミ報道があった際、「テレフォンショッキング」の本番中にいきなり観客の男性がそのことをタモリに質(ただ)すということもあった。

タモリはそんな話は聞いていないので「違うんじゃないですか?」と答えた。

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その日のゲストである山崎邦正(現・月亭方正)があまりのハプニングに慌てふためいていると、タモリが「お前が連れてきたんだろ!?」と邦正にツッコみ、笑いに変えた。

さらに「CM明けたらあそこにクマのぬいぐるみが座ってるぞ」と言ったタモリの言葉通り、CM明けにはクマのぬいぐるみがその男性の席に置かれていた(2005年9月21日放送。男性の退席は、本人と話し合い納得してもらったうえでのことだった)。

このような普通なら対処に困るような場面でさえも、男性の質問をはぐらかさず、しかもそこから笑いにまで持っていったタモリ、そしてスタッフの対応は印象的だ。ある意味、『いいとも!』という番組の真骨頂がうかがえた場面と言えるだろう。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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