「大人の無理解が原因」、不登校の子どもと親がトーキョーコーヒーに集まる訳 自分らしく生きられる世の中をつくるために
「『子どもが安心してそこに居られる場所は、“子どもたちのためだけ”に作ってはいけない』と、僕は思うんです。なぜなら、不登校など子どもの問題は、すべての大人の問題に直結しているから。大人が、子どもが学校に行かない理由や背景を理解しないままに『学校に行けないならこっちで学びなさい』と、単純に学校以外の居場所を作るのではなく、大人同士が集い、語らい、自分自身の悩みから解放され、価値観をアップデートさせる場所を作る。大人たちが楽しそうに過ごしているその場所に、『子どもも自由に来ていいんだよ』と声をかけることが、子どもにとっての真の意味での安心につながると思います」
どんな子どもも自分らしく生きられる世の中をつくるために
吉田田氏は、大阪市と奈良県生駒市で、25年以上にわたりアートスクール「アトリエe.f.t.」を主宰。「つくるを通して いきるを学ぶ」をテーマに、子どもたちがワークショップ形式で絵画や制作を学ぶクラスなどを運営してきた。
2020年には、6歳から18歳までの子どもを対象に、放課後等デイサービス「bamboo」を開設。障害のある子に向け、「つくる」ことを通して自信をもって人生を切り開く力を育んでいる。
「『アトリエe.f.t.』や『bamboo』で出会う子どもたちの中には、発達障害の子、精神疾患を患う子、LGBTQの子など、いわゆる社会的マイノリティの子もたくさんいます。日本社会はマイノリティを無意識のうちに排除してしまいがちで、その子たちは生きづらさを感じていることが多いものです。しかし、アートなどクリエイティブな活動は、その子たちの新しい未来を開く可能性をひめていると感じています」
学習障害で、学校では勉強についていけず福祉的なサポートを受けている小学生がいた。その子は恐竜が好きで、恐竜をモチーフに制作した絵や紙粘土のクオリティがとてつもなく高く、教室で一目置かれている存在だという。
「でも、みんなと一律に学ぶことを求められる『学校』という場では、その子は『障害がある子』とみなされてしまう。障害というのは、本人にあるのではなくて、環境にあるのではないかとつくづく思いますね。だって、その子がアトリエに来たら、その子の障害はいっさい消えてなくなり、輝くわけですから。マイノリティだけれども面白い特徴を持った子どもたちが、その子ならではの強みを生かして活躍できる社会にしていかなければいけない、という思いもあります」
2021年には、生駒市で放課後等デイサービスを運営する女性の声をもとに、地域みんなで子どもを支える「まほうのだがしやチロル堂」をオープン。2022年度にグッドデザイン大賞を受賞した。
不登校の子も、社会的マイノリティの子も、どんな子どもも自分らしく生きられる世の中をつくるためには、まずは大人一人ひとりの考え方や行動を変えていくことから。「トーキョーコーヒー」は、これまでたくさんの子どもたちと関わってきた吉田田氏が企てる、“世界一たのしい”革命なのだ。
「味噌づくり」をしながら教育や社会について語る
2024年2月。東京都足立区・葛飾区で活動する「トーキョーコーヒーあだち・かつしか」を訪れた。今回の活動の会場である区内の公共施設「亀有学び交流館 料理実習室」に足を運ぶと、香ばしくほんのり甘い匂いが部屋中に漂っている。
見ると、この場に集まった保護者と子どもたち約20人が複数のテーブルに分かれ、ゆでた大豆をすりこぎやマッシャーでつぶしている。この日の活動は、恒例の「味噌づくり」だ。

(撮影:長島氏)
大人は、最近の出来事や学校のこと、子育てのことなどについておしゃべりしながら手を動かしている。子どもたちは、そんな大人のそばで一緒に大豆をつぶしたり、歩き回って周りの様子を見渡したり、部屋の隅でお絵描きしたりなど、自由に過ごしている。会場全体に、ゆるやかで温かい空気が流れている。
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