「私は自己開示も下手なので、こういう家庭を築きたいといった会話もしないまま結婚話が進んでしまいました。不妊治療をがんばってでも子どもを授かりたいと思っていたのに、相手からは『子どもは欲しくない』と後になってから言われて……。結婚へのテンポも価値観も合わない、と私以上に相手が感じていたのだと思います。理由を告げられないまま急にフラれてしまいました」
そのショックで半年ほどは婚活を休んだ涼子さん。元気を取り戻してから、同じ結婚相談所に復帰した。前回の反省を踏まえて、攻める姿勢を身に付けていたようだ。相談所に新しく入った男性に狙いを定め、達也さんを見つけてお見合いを申し込んだ。
涼子さんが結婚相手に求める条件は、「年収は自分と同じく500万円程度。身長は170センチ以上で太っていない人。自分が今の会社で働き続けられる範囲で一緒に住めること」。身長175センチのITエンジニアで、ボクシングで体を鍛えている年収600万円の達也さんはど真ん中の男性だったのだ。
「会ってみたら、話し方もゆったりしていてとても居心地が良かったです。友だちと会っていても2時間ぐらいで切り上げたくなる私が、いつまでも一緒にいられると思いました。私は常にセカセカしているので、自分にないものを彼が持っていると感じたのかもしれません」
有頂天になった涼子さんは、お見合いから3回目のデートで結婚を見据えた真剣交際に入ることを達也さんに迫った。前の相手に自分が急かされて戸惑ったのを忘れたのだろうか。同世代女性からのアプローチが殺到していた達也さんは「まだ判断できないので交際中止にします」との答え。2人の縁が切れかかってしまった。
ここで涼子さんは粘り腰を見せる。達也さんとはすでにLINEでもつながっていたので、しばらく時間を置いてから結婚相談所のシステムは使わずに再び連絡。もう一度会う約束をとりつけ、ちゃんと付き合いたいと思っている理由を伝えた。
「相談所のルール違反なので、担当のカウンセラーさんからは叱られました」
さきほどから少しぼんやりとした雰囲気で涼子さんの隣に座っている達也さんはどのように感じていたのだろうか。聞けば、大事な物事は時間をかけてよく考えてから決めたいタイプのようだ。
「涼子さんには最初から好印象を持っていました。でも、たくさんの女性とお見合いしなければならず、ボクシングの練習や試合もあって、平日の夜や毎週末の予定がパンパンに。とにかく時間が欲しかったです。他の女性とも会い、涼子さんは時間をかけても嫌なところが見えてこなかったことに気づきました。僕は、レスポンスが遅すぎたりするのが嫌です。年収は400万円以上の女性だとそういう感覚が似ていて、ちゃんと会話ができると感じました」
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