家族社会学者が語る「多様化する結婚のカタチ」 今や「個人化の時代」で「選び」続ける人生に

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しかし今は、そうした性的マイノリティに関するすべてのことも、決定や判断、選択肢は「個人の自由」に委ねられています。葛藤する心のうちを、誰に、どこまで、どんな手段で、どんなタイミングで告知するか、個々人が悩み、一つひとつ決断を下す必要が生じています。

同様に、半世紀前は「男は仕事、女は家事育児」が基本形で、多くの人、特に男性は悩む必要もなかった「結婚生活」も、今は「専業主婦(夫)か、パートやアルバイトで働くか、正規雇用で働くか」など、多様な選択肢が考えられます。

それはつまり、夫と妻で、両親と義理の両親で、親戚や友人とで、それぞれ思い描く「結婚後の生活」に大きな齟齬が生じやすく、トラブルや諍(いさか)いも生まれやすくなったと言えるのです。

夫の側は「妻は結婚したら家庭に入り専業主婦になるのが当然」と思っているのに、妻は「女性も一人前に働くのが当然」と考えているかもしれません(最近は、逆のケースが増えているようですが)。

夫の両親は「嫁が介護をするのが当然」と思っているが、妻の両親は、「老後は介護施設が妥当」と思っているかもしれないのです。

「正解」が一つではなくなった時代、人々は常に「取捨選択」を迫られ、「周囲とのすり合わせ」や「自分の納得感」に対して、努力が求められるようになりました。 そうした現代に生まれ育った世代を、私は「個人化ネイティブ世代」と名付けています。

揺らぐ「結婚」の定義

「結婚(生活)」が多様化してきた背景には、インターネット社会の発展もあります。

かつてなら、同性愛の人が恋愛相手を探すのは相当な手間暇がかかったものです。ある特定の人々が集う場や環境に行かなければ、恋愛対象者も見つけられません。

それは「友情結婚」や「卒婚」なども同じです。そうした情報が外から入手可能になったからこそ、名前が付き、人々が選択できる(選択しなければいけない)ようになってきたのです。

これまでの社会では、人は自分の生きている半径数百メートルの関係性から、「結婚」「家庭」「子育て」に関する情報の多くを取得し、その価値観に大きな影響を受けてきました。

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