「非がなければ謝らず」、親の理不尽な苦情に毅然とした態度を取るべき理由 "憎まれ役"教員と"折衝役"担任を分けて対応

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齋藤氏は保護者から「訴えますよ」と言われたこともあるそうだ。こうした脅し文句にはどのように対応しているのだろうか。

「私は、自分に非がないのであれば謝罪はしたくないので、『訴える』と言われたら『どうぞ』と返答してきました。それでも実際に訴えられたことはありません。『ほかのお母さんたちもこう言っていますよ』と言う保護者には、『具体的な名前を5人以上挙げてみてくれますか』とお願いしてみたら、相手が言葉に詰まって会話が終わりました。『SNSで拡散しますよ』と言われることもありますが、SNS内のことは教員自身が知る由もありませんし、コントロールできるものでもないため、この一言のために対応を変える必要はないと思います」

齋藤氏は若い頃、授業参観中に私語を続けていた保護者を「子どもの『教育を受ける権利』を奪うことになる」と教室から退出させたこともあるという。

「一度毅然とした態度を取れば、『授業参観中に私語をすると怒られるらしい』とSNSでも広まるでしょうから、再び同じケースが起こることはまずありません。保護者同士はSNSで教員の噂を話すことも多いので、それをある意味、利用しようというわけです。こちらはあくまでも子どもの権利を守るために対応しただけなので、注意した保護者とその後トラブルに発展したこともありません」

「保護者」vs「教員」の対立構図ではなく、間に「子ども」がいる

保護者との間にトラブルが生じると、「保護者」対「教員」という対立の構図で捉えがちだ。しかし、齋藤氏はこの構図こそ見直す必要があると言う。

「保護者と教員の間には『子ども』の存在があります。共に子どもの成長を願っているはずなのに、すれ違っているだけではないでしょうか。クレームは親がわが子を溺愛している証拠でもあるので、『お子さんの未来をよりよくしていくために、こんな方法も考えられませんか?』と、子どもを主体にした話をすると理解を得やすくなります。クレームが入った時点では、保護者が上、教員が下という関係になりますが、子どもを中心に置けば同じ土俵で話し合えるのです」

教員同士での「共有不足」を指摘された場合など、「担任だけでは対応しきれないことに関しては『持ち帰って検討します』としてもよい」と齋藤氏。ただ、その場合も、いかにして保護者に納得してもらうかより、子どもにとって重要なことを考える視点が欠かせないと話す。

「子どもの未来を見据えれば、全クラスの掲示物の内容が揃っているかどうかよりも、もっと本質的で大切なことがあるはずです。そこを話題の中心にして、『こうした部分でお子さんはとても頑張っているんです』と子どもをほめると、多くの保護者にとってクレームはもうどうでもよくなり、話題が変わることもあります。子どもがよりよく成長していけば、保護者と教員の関係も自ずと良好になるはずですから、『共に子どもの未来を見据えて最善の方法を考えましょう』という原点に立ち返ることが、トラブル解決の近道になるように思います」

(文:安永美穂、注記のない写真: foly / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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