「非がなければ謝らず」、親の理不尽な苦情に毅然とした態度を取るべき理由 "憎まれ役"教員と"折衝役"担任を分けて対応

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チームでの対応は、保護者との間の「言った」「言わない」論争を防ぐ上でも有効だという。保護者から「今から来校するので話がしたい」と電話がきた場合は、「教員同士で対応の方針を相談して役割分担をしてから話し合いに臨めるように、電話を受けてから45分後以降にアポを設定するとよい」と齋藤氏はアドバイスする。

ただ、実際は、電話のやり取りだけで完結するなど、担任が1人で対応するケースも少なくない。そこで慌てずに対応できるようにするには、保護者のタイプに応じて「ここに落とし込めば納得してもらいやすい」という“ウィークポイント”を知っておくことが重要だという。

齋藤氏はクレームを言ってくる保護者を、精神病理学者の忠井俊明氏の分析に基づいて、「何でも悪く受け取るシゾイド型クレーマー」と「教師をギャフンと言わせたいナルシスティック型クレーマー」の2つに大別している。

「シゾイド型クレーマーはネガティブな思い込みに基づいた自己主張が延々と続くことが多く、心の病気を抱えている可能性もあります。担任が1人で対応すると疲弊しがちなので、複数の教職員で対応するとよいでしょう」

このタイプと話し合う際は、前担任も同席して『以前はこの対応でうまくいったので今回もこの対応でいきます』と伝えたり、子どもが活躍できている教科の専科教員が同席してその子の長所や成長の様子を伝えたりすることで、ネガティブな思い込みを払拭できることがあるという。

「一方、ナルシスティック型クレーマーは、教員を言い負かすことで自分の存在を証明したいという思いが強いため、自分が負ける可能性のある議論に挑むことはありません。話し合う際は、論理的な説明に長けた教職員が対応すると解決しやすくなります」

ただし、保護者の性格は上記のタイプに簡単に二分できるものではなく、双方の気質を持つ人も少なくないとのこと。その保護者からこれまでに寄せられた相談やクレームを事前に調べ、着地点を決めてからチームで話し合いに臨み、対応後は反省会を開いて今後の対策を練ることが重要だという。

「非がなければ謝らない」、毅然とした態度が再発防止になる

学校としての保護者対応のスタンスは、「組織」や「体制」のあり方よりも、「人」の考え方に左右されやすいと齋藤氏は指摘する。

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「クレームが入った場合、管理職や児童指導担当が『触らぬ神に祟りなしだから、とりあえず謝っておきましょう』という考えだと、担任に非がなくても謝らざるを得ません。その場合、担任の自己肯定感は下がり、保護者側も『先生は何でも聞き入れるから、不満は言わないと損』と考えて、いつかまたクレームを入れてくる可能性が高まります」

自らに非がなくても謝ることが常態化すると、そのストレスから心の病を発症して休職に追い込まれる教員も少なくない。さらに、その様子を見聞きした教員志望の学生たちが教職を敬遠するようになれば、教員の確保も難しくなるのではと齋藤氏は懸念する。

「教員側に非がある場合は、こちらが至らなかった点を具体的に伝えて反省する必要がありますが、教員側が正しければ決して謝らないという毅然とした態度を取ってほしいです。このような保護者対応について、大学の教職課程や教員研修で学べる機会を設けることも必要なはずです」

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