SMBC日興の次期社長が期す「失われた2年」の挽回 相場操縦事件の影響で野村や大和に後れを取る
証券業界では、株取引にかかる手数料収入中心のビジネスから、顧客の資産増加に応じて報酬を受け取るビジネスへの移行が懸案になっている。
取引さえしてくれれば顧客が損を出しても問題ないといった従来型ビジネスでは、顧客本位とは言えないという反省が背景にある。さらにSBIや楽天などネット証券を筆頭に手数料の引き下げが続き、手数料ゼロ時代へ突入していることも大きい。
1月30日の決算会見では、営業部門の利益が上がらない理由を問われた場面があった。
質問に吉岡専務は「(株取引の委託手数料中心の)フロー収益偏重から資産管理型ビジネスへの変革を進めている。中長期的に寄り添うコンサルティングは(親会社の)三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)との親和性が高い」と答えた。が、同時に「業績拡大には相当の時間がかかる」ことも認めた。
SMFGとの協力関係をどうする
一方、1月31日の第3四半期決算会見で野村や大和は資産管理型ビジネスへの移行についての自信をにじませた。
野村の北村巧CFOは「昔に比べてストック収入が増えて業績の安定性は高まっている」と発言。大和の佐藤英二CFOも「利益の質が向上していることに手応えを感じている」と述べた。
野村はこうした自信を背景に、1月31日に1000億円を上限とする大幅な自己株買いを発表。発表翌日の株価は2015年8月以来の高値をつけた。
大和も7年間トップを務めた中田誠司社長が4月に退任することを発表済み。後任を中田社長のもと構造改革に取り組んできた荻野明彦副社長が引き継ぐ。荻野副社長は「中田社長が作った流れを進化・加速させる」(昨年12月22日の会見)と、現路線を踏襲するとの意向を示す。
勢いづく2社を尻目に、SMBC日興の懸念要素としてあるのが親会社であるSMFGとの関係だ。
SMFGは昨年3月に銀行や証券、カード、保険など個人向け金融サービスを一元化したアプリ「オリーブ」を投入し、利用者を急速に増やしている。ところが、オリーブで証券サービスを提供しているのはSMFGと提携したSBI証券だ。SMBC日興はオリーブの利用者拡大を享受できていない。
SMFGが2021年に資本業務提携したアメリカの大手証券ジェフリーズとは、SMBC日興の海外部門との連携が進んでいる。だが、テコ入れすべき営業部門での打開策が見えづらい。
「営業部門の改善は不退転で臨むが、V字回復は考えていない」と吉岡専務が述べるなど、懸念を払拭する術ははっきりしない。ただ近藤社長は「守りだけでなく攻めるということも必要。そのためには社長の一新が必要」と語った。次期社長に求められるのはまさに「攻めの一手」となる。
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