SMBC日興の次期社長が期す「失われた2年」の挽回 相場操縦事件の影響で野村や大和に後れを取る

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2020年に就任した近藤社長は、在任期間中に相場操縦が行われ、法人としての刑事責任まで認定されたにもかかわらず、社長を続けざるをえなかった。

2022年10月に金融庁から3カ月間の一部業務停止命令を受けた際に「再生の道筋にメドがついた頃には身を引く」としたものの、1年以上の年月が経っていた。退任がなかなか決まらなかった状況について、ほかの証券会社幹部は「針のむしろ状態。見ていて気の毒だった」と慮る。

その間、コンプライアンス部門の人員増強や内部管理体制強化のシステム投資100億円などの体制整備を行った。それと同時に近藤社長が取り組んだのが、弁護士による調査報告書で指摘された「他人事意識や消極姿勢」といった企業風土の改善だ。

社長自ら全国の営業店を回り、社員との意見交換に力を入れた。事前質問のすりあわせをしないなど、できるだけ本音を言いやすい環境を作るために心がけたという。

体制再構築の一方で失った「推進力」

吉岡専務は1988年に旧・日興証券に入社した「生え抜き」ではあるものの、事件発覚時は三井住友銀行に在籍していた。事件後にSMBC日興に戻り、大きく揺らいだエクイティ部門の立て直しに取り組んだ。

退職者が相次ぎ、組織を再構築する必要がある中で重視したのがやはり「社内コミュニケーションの強化」だ。会見では「社員の本当の声に耳を傾けることが不可欠だ」と語った。

ただ、この間に失ったものは大きい。そのひとつが個人投資家などを対象とする営業(リテール)部門の「推進力」だ。野村ホールディングスや大和証券グループ本社といったライバルと業績を比較すると影響度がみえてくる。

2023年4~12月期の同部門利益は野村が839億円、大和が381億円といずれも久々の高水準だったのに対し、SMBC日興は9億円の営業赤字に沈んだ。投資銀行やホールセールの分野では他社と遜色のない業績なだけに、営業部門の劣勢が際立つ。

証券各社の2023年度第3四半期

ポイントは各社が進める「資産管理型ビジネスへの移行」を利益に結びつけられているかだ。

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