バーガーキング「増やそう」施策が秀逸すぎる理由 街のスキマを見つけるトレンドにマッチしている

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今回の「バーガーキングを増やそう」というキャンペーンもまた、こうしたSNS上でのユーザーインタラクティブを高める企画の一環だ。

顧客からすれば、自分自身の投稿で、バーガーキングの出店が決まるかもしれない、と思う。あたかも顧客自身が企業の経営に参加している感覚を生み出す巧みな戦略なのだ。

② 昨今の「居抜き」立地戦略に上手く乗っていること

次に、「② 昨今の『居抜き』立地戦略に上手く乗っていること」だ。これを考えるためには、これまでの企業における出店戦略の苦労を見なければならない。

今回のキャンペーンは出店が決まれば10万円、決まらなくてもお得なクーポンがもらえる、という顧客にとっていいことずくめの企画だが、実はこの仕組み、バーガーキング側にとってもメリットが多い。

店舗開発はプロがやるものだった

最初に書いた通り、店舗開発はその店の成否を大きく左右する。「日本政策金融公庫」が発表している「2023年度新規開業実態調査」によれば、飲食店一店舗を出店するコストの中央値は550万円で、決して安くはない。たとえチェーンストアであっても大きな失敗は許されず、どこに店舗を出店するのか、ということが大きな問題となってきた。

例えば、マクドナルドも、初期は、同社の実質的な創業者であるレイ・クロックが自分自身で出店候補地を見つけ出していた。ヘリコプター5台を使い、今までだれも見つけることのできなかった立地を見つけ出していったのだ(レイ・クロック『成功はゴミ箱の中に』)。

成功はゴミ箱の中に
(レイ・クロック『成功はゴミ箱の中に』)

出店戦略は、企業の中枢を支える戦略であり、それだけにそこにかかる負担や労力は大きい。だからこそ、顧客に立地を見つけてもらう、というバーガーキングの逆転の発想は合理的なわけである。しかし、なぜ今まで多くの企業がこうした発想ができなかったのか。

それは、「立地戦略」自体がきわめて専門性の高いものだと思われていたからだ。日本におけるチェーンストア戦略の祖といえる渥美俊一は、自身が組織した勉強会「ペガサスクラブ」で出店についての勉強会をたびたび行っていた。

そうした成果は、渥美が出版したいくつかの本に書かれていて、ここからも「出店戦略」は素人にはできない、プロが行うものだという認識が強く根付いていたことがわかるだろう。だから、それを消費者に見つけさせるという発想がなかなか出てこなかったのである。

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