1年間の締めくくりは「学級納め」で

近年、毎年担任替え・クラス替えをする学校が増えており、「担任の持ち上がり」が減る傾向にあります。つまり「1年勝負」なわけです。

学校によってさまざまな取り決めがあります。いわゆる「学校スタンダード」と呼ばれるものです。賛否は置いておくとして、翌年担任する教師がどのような教師であっても子どもたちが「自分たちの力で学んでいこう」「仲間と協力して進んでいこう」という姿を期待したいものです。子どもたちは担任を選ぶことはできませんから。

そこで意識しているのが「学級納め」です。「学級開き」はよく耳にしますが、次の学年にどう子どもたちを引き継ぐか、現担任の手を離れた後にどうつなげるかという「学級納め」(学級終い)も非常に大切だと考えます。

私が学級納めをスタートするのは3学期開始からです。少々早いように思われますが、3学期は3カ月間もありませんから、意識するのに早いに越したことはないです。学級納めで意識するのは以下の4点です。

1. 学習の積み残しをしない
2. 自分たちで仲間と協力しながら学級を自治する雰囲気づくり
3. 進級後に役立つスキルの向上
4. 進級に向けた前向きな姿勢

 

学級独自の文化「学級文化」を引きずると、翌年の担任に「やりづらさ」も引き継いでしまいかねません。なので、できるだけフラットな状態に戻していくことも意識してきました。「担任が変わるとルールも変わります。次の先生のやり方に合わせられる力がみなさんには十分身に付いていますよ」というメッセージを送り続けながら学級の締めくくりを行っています。

教室掃除で完全リセット状態にする

学級納めの終盤では、教室の掲示物をどんどんはがして子どもたちにあげています。

私は1年間、子どもたちとともに教室をつくっています。子どもたちの気付きや学びを場示物として可視化し、教室中に掲示しています。年間を通してかなりの枚数になるはずです。それらの掲示物は、担任が保存するのではなく、その年の子どもたちにプレゼントしてきました。なので僕の手元には写真しか残りません。

進級後も教室に貼っているという子もいます。卒業した子から「今でもあのときの掲示を自分の部屋に貼っていますよ」という子も。「学びの足跡を子どもに返す」ことのひとつです。

あとは、みんなで過ごした教室を徹底的にきれいにして次にこの教室を使う後輩や教師に引き継ぐようにしています。ただの大掃除レベルではなく「完全リセット状態」を目指します。

メラミンスポンジや中性洗剤、クレンザー等を用意し、窓ガラスについたテープ跡、黒板の汚れ、床の汚れ、机や椅子の天板や足の裏、ゴミ箱の周りや中、掃除道具入れなど、みんなで細部にわたるまで掃除をします。

次にこの教室を引き継ぐ教師が「こんなきれいに掃除された教室を引き継いだのは初めてです!」というくらいやります。「立つ鳥跡を濁さず」です。

「10年後映画」を作成する

1年間の締めくくりの学級納めの会では、みんなでつくった動画作品を鑑賞しています。

これまでは、1年間で撮りためた写真や動画を使ってスライドショーをつくり、保護者と鑑賞してきましたが、最近は子どもたちをキャストにした映画をつくって上映しています。

台本は子どもたちの書いた物語を土台にしてまとめています。SFやファンタジー物は小道具等が大変なので現代劇がいいでしょう。私の場合「10年後の私たち」をテーマに物語をみんなで書き、それをうまくミックスしながら台本を書いています。

「21歳の私は、大学で音楽を学びながらミュージシャンを目指しています」「今、アメリカで英語を学びながらユーチューバーとして毎日動画を配信しています」などなど、こうなっているといいなという将来の自分を想像しながら物語を書き、それらを基に配役を決め、台本をつくっていきます。映画ですので、台本を基にした「絵コンテ」をつくっておくと撮影がスムーズに進みます。

撮影はタブレット端末を使って行います。何度でも撮り直しが可能で、端末内の動画編集アプリを使うと短時間で編集作業ができます。音声だけ収録して、後付けで加えることも可能です。得意な子がいれば、撮影や編集も子どもたちに任せることもできます。動画鑑賞会は、保護者に子どもたちの将来の願いが伝わる会となりました。お勧めです。

そして新学期は、新しく担任する教室が決まったら、まず教室内を細かくチェックします。「黒板」「窓ガラス」「窓枠」「窓側の手すり」「教室前後の扉」「ロッカー」「掲示板」「教師用机」「児童机と椅子」などです

前年度、学年末に大掃除できれいにしてくれたはずなのに、探すとまだまだ汚れが残っています。特に厄介なのが「黒板や窓に付いたテープ跡」です。

ビニールテープやセロハンテープが長い間貼られたことにより、テープについていたのりが経年により固形化し、頑固にこびりついてしまっています。固形化したテープ跡にアルカリ電解水をかけ、メラミンスポンジでこすると少しずつのりが柔らかくなり、きれいに除去できます。

4月は学級経営の基礎を作る期間

4月の始業式からの3日間、7日間、30日間で1年間の学級経営の基礎をつくる「3・7・30の法則」を野中信行氏から学びました。経験を重ね、見通しがつくようになってからは、もう少しゆるいスパンで進められるようにはなりましたが、「スモールステップで学級経営を進める大切さ」は今も私の指針となっています。

4月から5月の1カ月間は、意図的に教師の介入度を高く設定して子どもたちと関わってきました。

4月当初の学級は、偶然集まった子どもたちで構成される「グループ」です。みんなで話し合いながら「学級の目的(ゴール)」を設定するプロセスを経て「チーム化」を目指します。

ゴール設定とともに「安心・安全に過ごすための約束事」という「枠」が大切と考えます。枠なしに子どもたちに自主を求めるのは「野放し(放縦)」であり、さまざまな危険が伴います。経験を重ねてきたことで見通しがつき、今では「子どもに任せる試み」を同時並行で進められるようになってきましたが、「枠の設定」を大切にするスタンスは変わりません。

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しかし、その枠の「つくり方」は変えてきました。子どもたちに教室運営を任せる雰囲気をつくるために「小さく始め、大きく展開する」を意識して進めています。

私は「教師こそ最大の教育環境である」と考えます。つねに教師主導で枠づくりを進めれば、子どもたちは受け身になります。そこで、まずは子どもたちが日々取り組む当番・清掃・給食などの仕組みについて一緒に考え、任せていく中で「自分たちで教室をつくっていくんだ」という雰囲気をつくっていきます。

私の理想の教師の在り方や学級経営は、経験や出会いを経て現在も変化し続けていますが、「子どもたちは生まれながらにして有能で、主体性を兼ね備えた存在である」という信念の下、自らの興味関心を追究し、他者とのかかわりを通して主体的に学び続ける「学び手」が集まる学級集団を目指します。

そのための目標と具体的な取り組みを『マンガでわかる!小学校の学級経営 クラスにわくわくがあふれるアイデア60』ではほかにもたくさん紹介しています。

(画像:すべて明治図書提供)

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